悪性神経膠腫におけるGuanosine triphosphate(GTP)代謝を標的とした治療について研究を進めてきた。これまで抗がん剤として代謝拮抗薬の1つであるDNA合成阻害剤の研究開発が進んでいるが、GTPについてはAdenosine triphosphate(ATP)と比較して対象とした研究は少なく、治療標的としてGTP阻害を介したDNA合成阻害薬は広く扱われていなかった。そこで申請者はGTPを対象に研究を進め、GTPが腫瘍細胞の増殖に重要であり、これらの産生経路を抑えることで腫瘍細胞の増殖が抑制されることを発見した。これまでに申請者はPhosphatidylinositol 5 phosphate 4 kinase β(PI5P4Kβ)がGTPを利用して腫瘍細胞の増殖に影響を及ぼすことを報告しており、本研究においてこれらのkinaseが患者から摘出した腫瘍検体においてどのように発現しているかを検討した。GTPの合成経路にあるInosine-5'-monophosphate dehydrogenese(IMPDH)を抑制する薬剤であるMycophenolate mofetilを用いた細胞増殖への影響、およびその機序についても検討を行なった。in vitroの実験においては、GTP産生のde novo経路を抑制することにより、腫瘍細胞の増殖抑制が示されたが、今後in vivoにおけるさらなる検討が必要である。その他本研究により腫瘍摘出術中にナビゲーションシステムを使用して、術前検査であるMethimonineを使用したPET画像における集積部位とその周囲の腫瘍検体の摘出を行なっており、その両部位におけるRNAシーケンス結果から今後の治療ターゲットとなりうる分子の同定を行なっている。
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