研究課題/領域番号 |
18K08941
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
伊東 清志 信州大学, 学術研究院医学系(医学部附属病院), 准教授 (00362111)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 頚椎インプラント / ポリエーテルエーテルケトン / 骨形成性 / ハイドロキシアパタイト |
研究実績の概要 |
本研究は、頚椎症等の骨疾患に用いられているチタン製インプラントの欠点を解消し、臨床的課題を解決できる新規の治療用インプラント器材の開発を目的とした。即ち、チタン製インプラントの高い剛性による術後の骨破壊、特に、高齢者やリウマチ性疾患をもつ女性患者等への適用における留意の必要性及びレントゲン撮影におけるハレーション惹起等の臨床上の問題点を解消した、安全かつ有用なインプラント器材の開発を目指すものである。 具体的には、既にインプラントとして用いられて、安全性が確認されているポリエーテル・エーテル・ケトン樹脂(以下 PEEK)の最大の欠点である極めて低い骨形成能をチタンに匹敵するまでに高めた、骨形成能PEEK器材の開発を目指すものである。そのため、PEEK表面に骨形成性物質のハイドロキシアパタイト(以下 HA)溶射により骨形成機能を付加する。PEEKへHAを溶射できる方法は未だ開発されておらず、本研究のPEEKへのHA溶射技術開発は画期的で、独自性が高い。また、本研究で開発を目指す骨形成能HA溶射PEEK材は、頚椎症以外の各種の骨疾患治療用インプラントの開発に繋がる、極めて創造性の高いものである。以下の三点を取り扱う計画であった。①PEEK表面にHA膜を形成させるための諸条件(PEEK表面及びHAの性状)について探索的検討を行う。②①で示された諸条件により作成されたHA膜形成PEEKのHA膜結合状態を、組成的/物理的に評価する。具体的には、SEM(走査電子顕微鏡)、TEM(透過電子顕微鏡)などでナノレベルの基材表面の観察や、「JIS K 6848-4 引きはがし試験」による物理的強度の確認を行う。③HA膜形成PEEKのHA膜の密度などを変化させ、骨形成性の評価を in vitroと in vivoで行う。これにより、骨形成に最も有利な条件及び方法を考察する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在、コロナ禍により実験が遅れている。本研究では日本で開発された溶射方法であるエアロゾルでポジション法(以下AD法)を用いた骨形成機能PEEK器材開発のための条件を明らかにすることを目的とし、以下の三点を取り扱う計画であった。 ①PEEK表面にHA膜を形成させるための諸条件(PEEK表面及びHAの性状)について探索的検討を行う。 ②①で示された諸条件により作成されたHA膜形成PEEKのHA膜結合状態を、組成的/物理的に評価する。具体的には、SEM(走査電子顕微鏡)、TEM(透過電子顕微鏡)などでナノレベルの基材表面の観察や、「JIS K 6848-4 引きはがし試験」による物理的強度の確認を行う。 ③HA膜形成PEEKのHA膜の密度などを変化させ、骨形成性の評価を in vitroと in vivoで行う。これにより、骨形成に最も有利な条件及び方法を考察する。しかし、共同研究者である、長野県工業技術センターおよび産業総合研究所との共同研究が、コロナ禍で大幅に遅れ、AD法を用いたPEEKへのHAの溶射条件の探索を現在施行している状況である。実際に各研究室に訪問することもままならず、やや実験計画から遅れている。今後、コロナ禍の終息に向かい、実験計画を加速させていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
現在、実験が遅れている状況であるが、オンラインでのカンファレンスを多用しながら、遅れを取り戻す予定である。とくに、現在難航している一つ目の課題であるPEEK表面への、AD法によるHA膜の形成実験を積極的に進める予定である。まずこの実験を進めるためには、AD法の種々の条件(溶射速度、溶射濃度など)を探索、決定することである。またPEEKそのものの成型条件を検索することも不可欠である。現在、溶射速度、溶射濃度については、探索できたので、PEEKの成型の条件を研究中である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍での実験の遅延が生じたためです。ご配慮いただきたく存じます。今後、オンラインを多用しながら、遅れを取り戻す予定である。とくに、PEEK表面への、AD法によるHA膜の形成実験を積極的に進める予定である。次年度は、まずこの実験を進めるためには、AD法の種々の条件(溶射速度、溶射濃度など)を探索、決定することである。またPEEKそのものの成型条件を検索することも不可欠である。現在、溶射速度、溶射濃度については、探索できたので、PEEKの成型の条件を研究中である。
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