研究課題/領域番号 |
18K08942
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
椎野 顯彦 滋賀医科大学, 神経難病研究センター, 准教授 (50215935)
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研究分担者 |
田村 類 京都大学, 人間・環境学研究科, 名誉教授 (60207256)
谷垣 健二 滋賀県立総合病院(研究所), 神経病態研究部門, 専門研究員 (70362473)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 悪性神経厚種 / 分子標的薬 / ファージディスプレイ / 血液脳関門 / ナノエマルジョン / DDS / MRI |
研究実績の概要 |
悪性腫瘍の中でも脳の悪性神経膠腫は治療が難しい。脳の機能を温存し腫瘍を絶滅させるためには、1つ1つの腫瘍細胞にのみ抗癌剤を投与する必要がある。しかしながら、脳においては血液脳関門(BBB)があり通常の抗癌剤はこれを透過して腫瘍細胞に到達できない。この問題を克服する目的で、ファージディスプレイ法を用いてBBBを透過し、かつ、ヒト由来の悪性神経膠腫がん幹細胞に選択的に取り込まれるプローブを開発した(特許申請中)。ヒトの悪性神経膠腫摘出標本からがん幹細胞を培養し、SCIDマウスの脳に移植し(PDXマウス)増殖をMRIで確認後、ファージを静脈投与したのち、腫瘍を摘出して腫瘍内のファージを培養することを繰り返すことにより、静脈経由で腫瘍に積極的に取り込まれるペプチドシークセンスを同定した(バイオパンニング)。これまでの研究で、BBBを透過し腫瘍細胞に選択的に取り込まれる分子標的ペプチドプローブ(MTPP)をバイオパンニン グ法で開発した(特許申請中)。このMTPP自体は腫瘍細胞に取り込まれるが、ファゴサイトーシス-エンドソームによる分解を受けることがわかっている。MTPPに抗癌剤とともにpH-dependent membrane active peptideを賦与すると、抗癌剤の作用が増強されることから推測された。そこで本研究では、BBB透過型のナノエマルジョン(NE)を開発し、その内部に抗癌剤、表面に分子標的MTPPを配置することにした。NEにBrij58を用いてHA2E5-TATなどを付与したナノミセルを合成してPDXマウスで効果を判定したところ有効性がみとめられた。今回は毒性が少ないTween80をベースとしてNEに変更して効果が改善しないか検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Brij58をより疎水性基のサイズの大きなTween80に変更し、目的のNEが構成できたが、PDXマウスでの腫瘍縮小効果は減少してしまう結果であった。原因を究明するために、DDSを再度見直すことにしているため。
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今後の研究の推進方策 |
ナノエマルジョン(NE)を構成するアルキル長鎖に分子標的ペプチドプローブ(MTPP)をコンジュゲートし、これをエマルジョン化することは成功した。電子スピン 分光法と動的光散乱法により構造を確認し、目標通り平均17nmのNEができている。これにゲルダナマイシン(GM)を包埋し、PDXモデルに5日間静脈投与し、腫瘍 の縮小効果をMRIで観察したが、NE+MTPPとNE単独では抗腫瘍効果に大きな差が認められなかった。 これはアルキル長鎖からNEを構成する際に、MTPPの影響により本来の向き(表と裏)が逆に構成されてしまった可能性がある。そこで Brij58をより疎水性基のサイズの大きなTween80に変更し、目的のNEが構成できるか実験した結果、Briji58と比較して期待した抗腫瘍効果は得られなかった。今後、クマリンによりDDSの見直しを行う予定。
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