研究実績の概要 |
免疫チェックポイント阻害剤を活用するためには腫瘍内の免疫細胞の浸潤度やサイトカインが重要である。これまでの研究で、膠芽腫や中枢神経リンパ腫の腫瘍内にCD163陽性の腫瘍関連マクロファージが沢山浸潤することが判明した。また、腫瘍関連マクロファージと髄液IL-10の濃度との関連も有意であることが判明した。そこで、IL-10のみでなく様々な免疫チェックポイント阻害剤に関連するサイトカイン神経膠腫感謝と中枢神経リンパ腫患者の治療前髄液を用いて濃度を測定した。2006年~2017年の間に神戸大学で手術され組織診断されたグリオーマおよびPCNSL患者で、治療前の髄液が-80℃で保存されていた患者を対象とした。Bio-Plex Pro Human Inflammation Assays(Bio-Rad Laboratories, Inc.)を用いて髄液中TNFスーパーファミリ―タンパク質、IFNファミリータンパク質、Tregサイトカインなど37種類の炎症関連分子を測定し、グリオーマとPCNSLで比較検討した。対象患者はグリオーマ55例、PCNSL 23例であった。グリオーマとPCNSLで有意差が認められたものは17種類であり、PCNSLで高値なものは14種類、グリオーマで高値なものは3種類(IL-2, IL-12, IL-22)であった。PCNSLで有意差が著明に高値であったのは、これまで報告のあるIL-10以外に、Osteopontin, TNFSF13, TNFSF13B, TNFSF14, sCD163, MMP2, MMP3, sTNF-R1, sTNF-R2であり、MMP1はPCNSLでは低値であった。Low gradeとhigh grade gliomaで比較すると、BAFF, IFN-a2, IFN-b, IL-2, IL-12(p40), IL-12(p70), IL-20, IL-22, IL-35, MMP3, Pentaxin-3, sTNF-R1, TSLPはhigh grade gliomaで有意に高かったが、IL-32のみlow grade gliomaで有意な上昇を認めた。PCNSLの方が、TNF関連分子など炎症性マーカーが高値なものが多かったが、グリオーマではIL-2, IL-22など、Th1細胞分化や細胞傷害活性などの炎症促進作用をもつ分子がPCNSLに比較して高かった。
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