本研究の目的は、頸椎症もしくは頸椎後縦靱帯骨化症等の圧迫性脊髄症に対する減圧術の治療効果を、歩行機能と大脳神経受容体機能から客観的に評価する方法を確立することである。そのために、歩行を総合的かつ客観的に解析可能な携帯型精密歩行分析計 (MG-M1110)を用いて解析し、さらに、大脳の運動関 連皮質における神経受容体機能の術後変化と比較する。最終的には、圧迫性脊髄症に対する除圧術の歩行機能改善効果の客観的証明と大脳へ与える影響を解明することを目指している。本年度は以下の二点を予定した。 1. 頸椎症または頸椎後縦靱帯骨化症による圧迫性脊髄症に対して徐圧術を施行する患者に、術前および術後三か月後に携帯型精密歩行分析計による歩行分析を 行い、従来行われているJOAscoreの評価も同時期に行う。 2. 術前および術後三か月に123I-iomazenil SPECTを行い、画像解析ソフトstatistical parametric mapping(SPM)あるいはthree-dimensional stereotactic surface projections(3D-SSP)を用いて客観的な評価を行うこと。1については、術前および術後三か月に携帯型精密歩行分析計による歩行分析やJOA scoreによる臨床評価が行えた症例は26例である。また、この分析に関しては、国内学会での発表を行い、現在、論文の執筆中である。2については、実際に術前および術後三か月に123I-iomazenil SPECTを行い、術前後の各脳循環代謝の変化の評価を行えたのは最終年度に対象症例を増やすことが出来ずに、最終的には2例となった。2に関しては2022年度以降に国内学会で発表予定である。また、今回の研究に関連した「三軸加速度計を用いた腰部脊柱管狭窄症に対する術後評価」は、論文の執筆中である。
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