研究課題/領域番号 |
18K08954
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研究機関 | 愛知医科大学 |
研究代表者 |
宮地 茂 愛知医科大学, 医学部, 教授 (00293697)
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研究分担者 |
松尾 直樹 愛知医科大学, 医学部, 准教授 (30465570)
永野 佳孝 愛知工科大学, 工学部, 教授(移行) (40610142)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 血管内治療 / ロボティクス / 挿入力 / カテーテル / ガイドワイヤー / フィードバックセンサー / リモートコントロール / 振動 |
研究実績の概要 |
これまでの十年間の研究で、プロトタイプのロボットは完成し、X線透視下の動作実証実験は前年までに成功している。小型化にもある程度成功し、血管撮影室の操作台の上で簡単に装着、移動ができるように改善した。現在コロナ禍の世界においては、医療者の感染を防ぎ、安全を守るため、患者への直接接触のない手術システムは、さらに必要不可欠なツールとなりつつある。またリモート操作で遠隔地から卓越した専門医の治療を簡単に受けられることは、ユビキタスな医療環境をつくるためにも極めて有望なシステムである。本年血管内治療支援ロボットについてプロトタイプが完成し、いよいよ実用化の段階に入り、反応速度も大幅に改善させた。当初より開発してきた挿入力測定装置(特許取得、臨床応用中)を組み合わせ、ロボットの駆動による器具の先進において、センシングフィードバックを行うことにより、過度な力が血管にかかって損傷することのないような安全性の高いシステムが完成した。実験段階でLAN回線を用いたリモート操作による動作確認にも世界で初めて成功している。 本年は企業の実験用血管撮影室を借りて、別室(50mほどの距離)からのリモート環境における、血管モデルを用いた遠隔操作実験を行なった。通信環境としては操作部とロボットをHTTP通信で接続した。2本のジョイスティックの傾きデータを操作部からロボットへ転送すると、ロボットはそれに合わせてカテーテルとワイヤを駆動するしくみで、ロボットの方からは搭載されているワイヤ挿入力のセンサデータを操作部へ転送した。操作部はセンサデータにあわせた音程で術者に挿入力を提示し、別室の術者はこのフィードバックにより血管壁にかかる圧ストレスの具合をリアルタイムに把握することができた。今回5G 回線による実証であったが、以前に比べ遅延はほとんどなく、術者の敏速な動きにもある程度正確に対応した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
スレーブサイドが初動時に安定した先進速度に至るまでの時間的傾斜、および先進を術者が止めた時にブレーキから完全停止に至るまでにややタイムラグがあることが問題であり、リモート実験ではさらにそれが顕著となりその改善が必要であるため。
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今後の研究の推進方策 |
1)伝達遅延の改善:さらに高速のWAN回線の使用やモータの改良などこの問題の解決を目指す。またロボットの動作不良時、または不慮の合併症が生じたときのレスキューをどうするかについても、緊急停止装置などの安全システムや用手的治療介入の方法について、機能を付加する必要がある。 2)付加価値をつけた手技の開発:きわめて高頻度の振動をワイヤーに加えることにより、カテーテルの先進がスムーズになり、操作性が向上することが実験的に確認されたので、この発振装置を組み合わせることにより、用手的に強い力で押し込む必要があった血管屈曲部でのカテーテル操作が容易になりうる。この付加価値についてその有用性を検証する。 3)滅菌作業による安全性、および動作への影響の確認:上記の機器デザインとも関連するが、防水密閉したコンパクトな設計とし、人体に影響のない材料を用いた部品を用いて、滅菌操作に耐えられる構造とする。また患者ごとにデバイス挿入部分が取り替えられるように、駆動部に着脱できるディスポーザブルなキットを開発する。 4)実際の体内での動作確認(動物実験):これまでは、シリコン血管モデルによる定常水流内における実験的検証であったが、実際の拍動性血流が流れる動脈内での実証が必要である。人体をシミュレーションできる大型動物(豚を予定)を用いて、実際の操作の安全性と正確性を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
通信速度向上のためのデバイス、ツールの購入が遅れているため 学会の中止などにより、発表用の支出が予定より少なくなったため
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