研究課題/領域番号 |
18K08955
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研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
森岡 基浩 久留米大学, 医学部, 教授 (20295140)
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研究分担者 |
広畑 優 久留米大学, 医学部, 教授 (40218863)
折戸 公彦 久留米大学, 医学部, 講師 (50597408)
吉富 宗健 久留米大学, 医学部, 助教 (80529462)
青木 孝親 久留米大学, 医学部, 講師 (70330842)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 脳虚血 / フリーラジカル / 神経細胞死 / HSP70 / 海馬 |
研究実績の概要 |
1)まず予定通り神経系培養細胞であるPC-12を用いたCNNの効果とその濃度実験をMTT assayにて行なった。致死的な量であるラジカル反応後毒性生成物の主体であるHNE (hydrox nonenal) 250 micro mole存在下でCNNの細胞死抑制効果を検討した。最終結果としてはCNN 10mM までは細胞死が50%以上確認されたが30mM以上にて細胞死がほぼ100%抑制されていた。さらにCNN単独投与でも500mMまで検討を行なったが副作用なく細胞は生存していた。 2)次にスナネズミに対する一過性(5分間)両側内頸動脈閉塞モデルを用いて7日後の海馬CA1錐体細胞に見られる遅発性神経細胞死(delayed neuronal death:DND)に対するCNNの効果を検討した。CNN 20mg/kg を閉塞前に投与すると細胞死は65%抑制することができた。 3)脳虚血においては脳虚血イベント発生後の投与で細胞死抑制効果が見られることが望ましい。そのためスナネズミ虚血実験において脳虚血5分後投与の細胞死抑制効果を検討したところCNN100mg/kgの投与で優位差を持って40%の細胞の生存が確認されCNNは脳虚血発生後投与でも細胞死抑制効果があることが明らかになった。 4)CNNの効果がどのような経路でもたらされているのかを検討するためにスナネズミ脳虚血モデルにて脳虚血後24時間の時点でHSP70の発現を検討した。結果としてCNN投与で海馬錐体細胞にHSP70が発現しておりこれらの分子を介して細胞死を抑制していることが推察された。 5)さらに次の脳虚血性細胞障害のモデルとして中大脳動脈閉塞モデルを考えており現在実験室にて適切な脳虚血時間とその条件を検索中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初のある程度予定していた実験までは概ね順調に進行したと考えられる。しかしながらこれからの発展の実験がコロナウイルス問題でストップしている状況である。次の年度の研究の遅れが懸念されている状況である
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今後の研究の推進方策 |
1)次は脳梗塞の臨床像にさらに近似したラットの中大脳動脈閉塞モデル(MCAO)に対するCNNの効果を検討する予定である。CNN自体がフリーラジカル反応物質の毒性に対する治療効果を持つためにMCAOは本来一過性である方がフリーラジカルの産生が見られるために一過性モデルを計画している。MCAOの一過性モデルは脳梗塞の形成にばらつきが多いため研究室の環境/購入動物種による安定した条件を模索中である。 2)MCAOに対するCNN治療実験は脳梗塞の範囲の評価のみならず動物の高次機能の評価が必要と考えられる。そのため熊本大学の薬理学研究室などの高次機能解析システムなどを用いて解析ができるか検討中である。 3)スナネズミ海馬におけるdelayed neuronal deathの検討でもやはりCNNの効果は100%の効果を達成することはできなかった。これはやはりフリーラジカルによる産生毒物が単一でないことも考慮すべきであり、脳虚血による細胞死の抑制治療を考慮するとその他の薬物による複合的な治療も考慮しておく必要があると考えられる。現在は当教室で臨床研究進行中のbarbiturate治療との組み合わせを検討中である。
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