本研究は動物実験と臨床研究を並行して行うこととしている。以下に2つに分け実績を報告する。 1)動物実験 ラットを用い、頚部内頚動脈よりタングステンワイヤーを挿入し頭蓋内内頚動脈先端部を穿通することによりくも膜下出血(SAH)を作成した。2年目の目標は、early brain injury(EBI)における酸化ストレスの原因としての役割とEBIの構成要素としての脳微小循環障害を評価することである。パラメーターとしては神経細胞アポトーシスの程度、脳浮腫の程度、脳内微小循環系の内皮細胞アポトーシスの有無と程度、脳内微小血栓の有無と程度などを、SAH作成24時間後に摘出した脳を用いて解析し、抗酸化ストレス剤であるエダラボンを投与した群と比較した。エダラボン非投与群では、頭蓋内圧亢進および血腫強度に相関して、神経細胞アポトーシス、脳浮腫、脳内微小循環系の内皮細胞アポトーシス、脳内微小血栓がみられたが、エダラボンの投与においてこれらがいずれも軽減した。以上から、EBIにおいては脳内微小血栓が重要な構成要素となることおよび酸化ストレスが重要な原因となることが示された。 2)臨床研究 脳動脈瘤性くも膜下出血の重症例(WFNS grade IV・V)の急性期手術(脳動脈瘤頚部クリッピング術)において、術中採取された脳組織を用い神経細胞アポトーシスの有無・程度、術前後に行ったMRIによる脳浮腫の有無・程度との相関を昨年に引き続き検討した。また、MRIによるarterial spin labeling法(ASL) での評価と脳血管撮影上の脳内循環速度測定で脳内微小循環障害の検討を行った。7例の症例が対象となり、全例で脳微小循環障害の存在が、脳血管撮影(脳内循環速度)およびASLで確認され、MRIによる脳浮腫との相関がみられた。
|