研究実績の概要 |
本研究の目的は、未破裂脳動脈瘤の増大に決定的な役割を果たしている「血行力学的因子」の解明である。数値流体力学(computational fluid dynamics: CFD)を用いた脳動脈瘤の血行動態シミュレーションを行い、流速、流量、壁面せん断応力、血液滞留時間などの各種パラメータを定量化し、その病理病態との関係を検討する。 本年度の研究実績として、以下の二つが挙げられる。一つ目は、脳動脈瘤増大速度と流入血流量との正の相関関係が証明されたこと、二つ目は、脳動脈瘤増大部位における血行動態の特徴を定性的・定量的に明らかにしたことである。 我々は、先行研究において、脳動脈瘤への血液流入率が脳動脈瘤治療(コイル塞栓術)の予後に影響することを報告している(Sugiyama S, et al. Stroke 2016)。今回、我々は、同様の手法によって、経過観察に安定であった動脈瘤(A群)と成長をきたした動脈瘤(B群)との2群間の比較を行った。その結果、B群の血液流入率は、A群と比較して有意に高いことが明らかになった。さらに、血液流入率は、増大速度と正の相関関係にあることが分かった。 また、それを手がかりとして、動脈瘤の成長部位に特徴的な血行動態を明らかにした。すなわち、流入血流が脳動脈瘤増大部位に与える影響を定量的に評価する手法を考案した。 以上の結果を、機械学習を用いた脳動脈瘤増大予測システム(前年度までに開発を終えていたプロトタイプ)へと導入し、予測精度を高めることに成功した。
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