本研究の目的は,フローダイバーター単独では治癒困難な動脈瘤を対象として,動脈瘤内にプラチナ製コイルではなく,多孔質足場(セルロースポーラスビーズ,cellulose porous bead: CPB)を留置し,さらに母血管にフローダイバーターをおいた場合,瘤内の血栓化およびフローダイバーター内に新生内膜がいかに誘導されるかを,瘤内部の組織学的検討から解析することである。研究代表者は,ラットの動脈瘤モデルにCPBを留置し,動脈瘤開口部に新たな血管壁が誘導され,瘤内への血流が完全に阻止されることを実験的に確認している。フローダイバーター単独では動脈瘤を完全血栓化に持ち込みづらくても,瘤内にCPBを留置することによって,動脈瘤開口部にあるフローダイバーター上に新生内膜を誘導することが期待できる。臨床現場で遭遇するのは,内頚動脈の頭蓋硬膜内の大型瘤で,海綿静脈洞部で内頚動脈が屈曲した後の大弯側に位置するものである。この瘤と母血管との位置関係は,実験動脈瘤 では curved aneurysm modelに相似する。よって本研究では,フローダイバーター単独では血栓化が誘導されにくいとされるcurved aneurysm modelをウサギで作成する必要がある。 ニュージーランドホワイトラビットを使用し,ケタミンによる全身麻酔下に頚部血管を露出し,curved aneurysmの作成を試みた。研究代表者は,これまでにビーグル犬およびラットを使用して,動脈瘤を作成した経験がある。しかしウサギの場合,対象となる頚部血管が直径約2mmと細く,また非常に攣縮をきたしやすい。また,作成した動脈瘤内に容易に血栓が生じてしまい,瘤作成が非常に困難であり,研究期間において安定した動脈瘤モデルの確立には至らず,動脈瘤内部へのCPB留置もできていない。本年度で研究は終了するが,今後本課題を再開する場合には,実験時の麻酔管理および術後の血栓予防処置,また手術手技の問題点を整理し,改善する必要がある。
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