研究課題/領域番号 |
18K08968
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
杉生 憲志 岡山大学, 大学病院, 准教授 (40325105)
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研究分担者 |
黒住 和彦 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 准教授 (20509608)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 抗血管新生薬 / グリオーマ / 脳腫瘍 / PD-1阻害剤 / 免疫チェックポイント阻害薬 / 抗VEGF抗体 |
研究実績の概要 |
原発性脳腫瘍の約30%を占めるグリオーマの予後は極めて不良であり、手術療法、化学療法、放射線療法を併用しても平均生存期間は約1年である。近年、日本のグリオーマ治療において使用が開始された抗VEGF抗体bevacizumabは、世界規模の臨床試験において、無増悪生存期間は延長したが全生存期間では有意な延長効果は認められなかった。 Programmed cell death 1 (PD-1) と、そのリガンドである programmed cell death ligand 1 (PD-L1) はT細胞のapoptosisを促進させ、Treg(免疫寛容を司るT細胞)を誘導する。2014年には米国で免疫チェックポイント阻害薬である抗PD-1抗体の臨床試験が開始された。免疫チェックポイント阻害薬と抗VEGF抗体との併用療法については、以前、転移性悪性黒色腫に対する有効性が報告されたが、脳腫瘍については今まで有効性を検証した報告はない。今回我々は免疫チェックポイント阻害薬と抗VEGF抗体との併用効果について検証し、そのメカニズムを調べる。 本年度は、分子標的薬bevacizumab、PD-1阻害剤などについて、本研究のセットアップを行った。同種移植モデルへの効果を得るためにマウス抗VEGF抗体も準備した。また同種移植脳腫瘍モデルを作製した。 来年度は脳内の腫瘍径や白血球浸潤を無治療群、抗VEGF抗体単独治療群、PD-1抗体単独治療群、抗VEGF抗体及びPD-1抗体併用群で比較し、免疫チェックポイント阻害薬による治療効果や抗腫瘍効果について検討する。さらに、免疫組織染色を行い、腫瘍細胞及び白血球の形態、分布、機能を検討する。腫瘍内に浸潤する白血球についてはフローサイトメトリーで評価する。また、bevacizumab誘導浸潤に対して浸潤抑制がなされるのか、否かについて検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
分子標的薬bevacizumab、PD-1阻害剤などについて、本研究のセットアップを行った。同種移植モデルへの効果を得るためにマウス抗VEGF抗体も準備した。マウス抗PD-1抗体については小野薬品株式会社と交渉し、供給していただいた。また、C57/bl6マウスに脳腫瘍細胞株(GL261)を植え、同種移植脳腫瘍モデルを作製した。
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今後の研究の推進方策 |
脳腫瘍細胞移植7日後から、抗VEGF抗体は1回あたり10mg/kg、PD-1抗体は1回あたり10mg/kgの用量で、3日おきに計3回投与する。腫瘍脳内移植の2-5週後に屠殺し、脳を摘出する。脳内の腫瘍径や白血球浸潤を無治療群、抗VEGF抗体単独治療群、PD-1抗体単独治療群、抗VEGF抗体及びPD-1抗体併用群で比較し、免疫チェックポイント阻害薬による治療効果や抗腫瘍効果について検討する。 抗PD-L1抗体、抗TNF-β抗体、抗CD-4抗体、抗CD-8抗体等を用いて免疫組織染色を行い、腫瘍細胞及び白血球の形態、分布、機能を検討する。腫瘍内に浸潤する白血球についてはフローサイトメトリーで評価する。また、bevacizumab誘導浸潤に対して浸潤抑制がなされるのか、否かについて検討する。 さらに、マウス脳腫瘍組織からRNA を抽出し、qRT-PCR arrayを用いて免疫チェックポイント分子阻害療法による遺伝子学的な変化について検討する。マウス脳腫瘍組織からタンパク質を抽出して、Western blottingを用いて免疫チェックポイント阻害薬によるタンパク発現量の変化について検討する。統計学的データ解析を行い、学会発表・論文投稿する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成30年度は、物品費を節約、また研究室に既存の消耗器材等を利用したため次年度への使用額が生じた。繰り越しされる額は、物品費(動物、抗体・キットの購入等)また資料収集のための学会出張旅費へ充てる予定である。
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