研究課題
原発性脳腫瘍の約30%を占めるグリオーマの予後は極めて不良であり、手術療法、化学療法、放射線療法を併用しても平均生存期間は約1年である。近年、日本のグリオーマ治療において使用が開始された抗VEGF抗体bevacizumabは、世界規模の臨床試験において、無増悪生存期間は延長したが全生存期間では有意な延長効果は認められなかった。 Programmed cell death 1 (PD-1) と、そのリガンドである programmed cell death ligand 1 (PD-L1) はT細胞のapoptosisを促進させ、Treg(免疫寛容を司るT細胞)を誘導する。2014年には米国で免疫チェックポイント阻害薬である抗PD-1抗体の臨床試験が開始された。免疫チェックポイント阻害薬と抗VEGF抗体との併用療法については、以前、転移性悪性黒色腫に対する有効性が報告されたが、脳腫瘍については今まで有効性を検証した報告はない。今回我々は免疫チェックポイント阻害薬と抗VEGF抗体との併用効果について検証し、そのメカニズムを調べることとした。分子標的薬bevacizumab、PD-1阻害剤などについて、本研究のセットアップを行った。同種移植モデルへの効果を得るためにマウス抗VEGF抗体も準備した。また同種移植脳腫瘍モデルに関しては、マウス脳腫瘍株であるGL261、005をC57BL/6の脳内に移植した。特に005モデルで再現性のある結果がでて、survival timeは中央値が得られた。Gl261、005共に比較的境界明瞭な、腫瘍を形成することがわかった。今後VEGF阻害剤、PD-1との併用の試験をトライしていく予定である。
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