頭蓋内胚細胞腫瘍は適切な治療により長期生存が期待できる数少ない悪性脳腫瘍であるが、診断(組織型分類)、病勢確認を確実に行うためのバイオマーカーは未だ存在しない。近年、microRNAが腫瘍形成の様々な過程に関与していることが明らかになりつつあるが、一方で体液中に放出される分泌型microRNAが、がんを代表とする様々な疾患のバイオマーカーとなり得るとして注目されている。microRNA発現プロファイルに基づいて頭蓋内胚細胞腫瘍の各組織型への分化過程におけるバイオマーカーを同定し、患者血液を用いてリアルタイムにモニターすることを目標とする。 昨年度までと同様に頭蓋内胚細胞腫瘍患者のライブラリーの作成をまず行った。その後は以下に沿って研究を進めた。 頭蓋内胚細胞腫瘍の各組織型の臨床サンプルよりmicroRNAを含んだtotal RNAを抽出した。コント ロールとしては正常組織(正常脳、松果体組織、精巣、卵巣)および生殖器胚細胞腫瘍を用い、頭蓋内胚細胞腫瘍特的なmicroRNAを同定する。 上記に沿って実験を進めて行ったが、当初想定していたよりも新規の胚細胞腫瘍患者が非常に少なく、ライブラリーの作成がうまく行かなかった。一方で、同一腫瘍のtotal RNAに対しは、網羅的遺伝子発現解析を行う予定であったが、こちらもライブラリーの作成がうまく行かなかったことから、完遂には至っていない。現時点においてはバイオマーカー候補としてはmiR 371-373およびmiR302/367を想定しているが、網羅的解析により新たmicroRNAが選出されることも期待される。
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