研究課題/領域番号 |
18K08973
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
出雲 剛 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 准教授 (40343347)
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研究分担者 |
諸藤 陽一 長崎大学, 病院(医学系), 助教 (40437869)
藤本 隆史 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 客員研究員 (00712085)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | blood brain barrier / metastatic brain tumor / pericyte |
研究実績の概要 |
本研究では血液脳関門(BBB)の基本構成単位である脳毛細血管内皮細胞、ペリサイト、及びアストロサイトといった、全ての細胞を組み合わせた複数の共培養in vitro BBBモデルを用いて、病態モデル(虚血、炎症、がん脳転移)を作製、また、灌流型の3次元BBBモデルを開発し、neurovascular unitにおける細胞間相互作用を検討することを第一の目標とした。さらに現在臨床の現場で使用されている薬剤がBBBに与える影響及びその作用機序の解明を行った。このメカニズムを解明することにより中枢神経疾患治療薬の開発、ひいては全く新しい創薬概念である「BBB保護薬」の開発を目的として研究を行ってきた。 令和3年度においては、まずは灌流型3次元血液脳関門モデルの作成に取り掛かり、長崎大学薬理学教室および米国ワシントン大学との共同研究を進めた。その成果は国際シンポジウムにて報告を行い、高い評価を得た。また、同時に進めていた2次元in vitro血液脳関門モデルの作成を行った。多孔質の半透膜をもつ立体培養皿を用い共培養モデルを作製した。液性因子のみの影響を受けるモデルと、内皮細胞とペリサイトまたはアストロサイトが接触できるモデルを作製し、更に3種類の細胞を同時に共培養したモデルも含め7種類のモデルを作製した。 上記の研究根幹を元に、令和3年度においては、造影剤脳症におけるBBB機能障害の関与についての検討を進めてきた。その機能障害がRhoキナーゼ阻害剤により、MAPキナーゼ系を介して改善可能であることを明らかとした。また、その研究成果について論文発表した。造影剤脳症に対するPhoキナーゼ阻害剤による治療というdrug repositioningの可能性が示唆される研究となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2次元in vitro血液脳関門モデルを用いた研究は、上述のごとく脳転移モデルを中心に順調に進行中である。また、灌流型3次元in vitro血液脳関門モデルについても、国際共同研究を含めてほぼ順調に進行している(日本学術振興会 二国間交流事業共同研究、in vitro血液脳関門モデルを用いたがん脳転移メカニズムの解明、2018-2019年)。薬剤およびがん細胞が血液脳関門機能に与える影響については、すでに多くの実績を積み上げている(Hiu T., et al. Cell Mol Neurobiol, 2008, Morofuji Y., et al. J Neuroinflammation, 2012, Fujimoto T, et al. Cell Mol Neurobiol. 40(1):113-121, 2020)。
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今後の研究の推進方策 |
今後は薬剤およびがん細胞がBBB機能に与える影響の評価のための、がん脳転移モデル以外の病態モデルの作成と、そこから得られる細胞を回収しての免疫生化学的検討、および血管腔側および脳側の培養液を用いたサイトカインアッセイを行う予定である。 また、2次元および3次元モデルの比較検討と分子生物学的機序の解明を目的として、病態モデルにおけるBBB機能をa)EVOM抵抗計(Volt-Ohm resistance meter)を用い た経内皮電気抵抗 (transendothelial electricalresistance, TEER)、b)sodium fluorescein 法(小分子(376Da)のparacellular transport)、Evans' blue-albumin 法(大分子(67kDa)のtransendothelial transport)c)P-糖タンパクの機能検定(rhodamine123法による)、d)Immunoblot 法にてタイトジャ ンクションタンパク(claudin-5, occludin, ZO-1)、とトランスポーター(P-gp, MRP, BCRP, GLUT1)の発現を確認することで、詳細に検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
血液脳関門2次元モデルおよび3次元モデルにおいて、血管側および脳側からの灌流液のサイトカインアッセイを行う予定であったが、コロナ禍の影響もあり、検体収集が次年度に持ち越される予定となったため、未使用額が発生した。 このため、灌流液のサイトカインアッセイを次年度におこなうこととし、未使用額はその経費に充てることとしたい。
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