研究課題/領域番号 |
18K08977
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
片野 広之 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 准教授 (30295612)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | DNA methylation / carotid plaque / calcification / carotid endarterectomy |
研究実績の概要 |
平成30年度に高石灰化頚動脈粥腫において、血管新生および石灰化に関与する遺伝子の一塩基多型の差異を明らかにした。これを踏まえて、さらに高石灰化頚動脈粥腫の遺伝子修飾の特徴を探るため、令和元年度は、頚動脈内膜剥離術にて摘出した8粥腫についてカルシウムスコアをもとに高・低石灰化2群(3:5)に分け、ゲノムDNAを抽出後、Bisulfate変換し、増幅、断片化、精製し再懸濁後、Infinium MethylationEPIC BeadChipアレイにapplyしhybridizationを行った。標的ヌクレオチドを取り込ませ蛍光色素標識抗体を用いて染色後、Illumina iScanを用いて蛍光イメージを取得し、GenomeStudio/Methylation Moduleを用いてデータマイニング解析を行った。RefSeqアノテーション情報を用い、全プローブ、プロモータ領域、CpG Island領域について、高・低石灰化群間でDNAメチル化頻度が有意差を示すデータを抽出した。865,918プローブをBMIQで正規化し、p<0.05でフィルタリングを行い9,618プローブを抽出した。プロモータ領域にてメチル化異常を示した667遺伝子のうち、低メチル化が94.5%を占めた。主成分分析で高石灰化群は低石灰化群と分画され、高石灰化群において13遺伝子で|log2 ratio|>1.0のメチル化差異を認めた。石灰化に関する遺伝子として、カルシトニン、CGRP受容体に関与するRAMP1が検出された。GO解析ではDIO2とともに細胞生合成過程制御にアノテートされた。以上の如く、頚動脈粥腫について、高石灰化群と低石灰化群のDNA methylation解析を行い、石灰化に関する遺伝子のエピジェネティクスとして、メチル化状態の差異を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度に頚動脈内膜剥離術にて摘出した10粥腫についてカルシウムスコアをもとに高・低石灰化2群に分け、それぞれ核酸を抽出後、SureSelect XT Human All Exon (Agilent)を用いエクソンを濃縮してシーケンスライブラリーを作成、次世代シーケンサーHiSeq2500(Illumina)を用いて塩基配列を取得した。Quality Score 30以上の塩基は91.8-94.5%と良好であった。BMA-MEMによりhg19へマッピング(99.6-99.7%)し、PicardによりDuplicateリードを除去した(ユニーク率95.6-96.5%)。平均カバー率(>10x)は97.6%であった。頚動脈粥腫について、高石灰化群と低石灰化群の全エクソームシーケンスによりゲノム変異の特徴を比較検討した。高石灰化粥腫において、血管新生および石灰化に関与する遺伝子の一塩基多型の差異を認めた。令和元年度はゲノムDNAを抽出後、Bisulfate変換し、増幅、断片化、精製し再懸濁後、Infinium MethylationEPIC BeadChipアレイにapplyしhybridizationを行った。標的ヌクレオチドを取り込ませ蛍光色素標識抗体を用いて染色後、Illumina iScanを用いて蛍光イメージを取得し、GenomeStudio/Methylation Moduleを用いてデータマイニング解析を行った。RefSeqアノテーション情報を用い、全プローブ、プロモータ領域、CpG Island領域について、高・低石灰化群間でDNAメチル化頻度が有意差を示すデータを抽出した。石灰化に関する遺伝子のエピジェネティクスとして、メチル化状態の差異を認めた。以上の如く概ね順調に研究が進展している。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度は、エピジェネティクス解析として、修飾ヒストン抗体でクロマチン免疫沈降を行い、高・低石灰化粥腫群でのヒストン修飾の差異を明らかにする予定である。頚動脈内膜剥離術で摘出した頚動脈粥腫をホルムアルデヒドでクロスリンクし、超音波破砕によりクロマチンを断片化した後、抗体とMagnosphere磁気ビーズを添加して免疫沈降(ChIP: chromatin immunoprecipitation)を行う。Input画分としてDNAを抽出、回収、精製してコントロールとし、免疫沈降物をqRT-PCR, microarray, NGSで解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和2年3月末の国内学会発表に伴う経費等への使用を予定していたが、新型コロナウイルス感染症による影響で急遽学会が令和2年8月に延期になり、当該経費に関わる使用を令和2年度に持ち越す必要が生じたため。
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