研究課題
本研究では、無症候性脳腫瘍の自然経過と治療適応を明確にする目的で、今後さらに発見の機会が増加すると考えられるこれらの腫瘍について、治療/追跡の適応ガイドラインの策定を目指し、その基盤となる「無症候性脳腫瘍データベースの構築」を行ってきた。平成30, 31年度(令和元年度)に、本課題の遂行に賛同する多施設共同の研究体制を構築し、インターネットによる症例のオンライン登録(レジストリ)を目指して、①髄膜腫、②聴神経腫瘍、③下垂体腺腫、④その他の腫瘍、のそれぞれにおいての調査項目を選定、それぞれの腫瘍のオンラインフォームを作成した。当該年度にはこれらのフォームを用いてのオンライン登録をすすめ、おおよその集積症例数は当初の目標症例数より少ないが、解析に値する症例数となった。それぞれの腫瘍について主には自然経過の解析をすすめているが、このうち髄膜腫ではもっとも解析がすすみ、これまでの知見通り、多くの髄膜腫が一定期間において増大せず、増大速度や増大パターンは症例間で一定ではないことを明らかにした。増大のバイオマーカーとして臨床的に若年者、男性、サイズ、非頭蓋底を抽出、画像では石灰化がないこと、T2 high intensityとperitumoral edemaが同定された。さらに、臨床的経過や介入を加えた包括的解析によれば、①画像上の増大は臨床的progressionを意味しないのではないか、②治療適応となるprogressionを示すのは10分の1以下の症例のみではないか、③最大5年間追跡を行えば、progressionするか否かは判断できるのではないか、という可能性が浮上しており、今後のさらなる詳細な解析を予定している。その他の腫瘍型においても解析をすすめており、髄膜腫で明らかにされたものとの差異についても検討している。
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Diagnostics(Basel)
巻: 11 ページ: 1041
10.3390/diagnostics11061041.