研究課題/領域番号 |
18K08979
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研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
吉田 研二 岩手医科大学, 医学部, 講師 (10316367)
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研究分担者 |
小笠原 邦昭 岩手医科大学, 医学部, 教授 (00305989)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 脳血管障害 / 内頸動脈狭窄 / 脳血管反応性 / 過灌流 / 血管ホルモン |
研究実績の概要 |
頚部内頚動脈狭窄症の外科的治療(頚動脈内膜剥離術)の有効性が確立されているが、術中の脳虚血の強度を近赤外線分光法(near-infrared spectroscopy:NIRS)を用いて、非侵襲的に脳表の酸素飽和度(rSO2)を持続的に計測し、術前に脳循環予備能が著しく障害された症例の中には、遮断解放後のrSO2が前値へと収束せず、高値のまま遷延することを確認した。過灌流と呼ばれる病態で、脳血流自動調節能が破綻している状態である。 「心血管ホルモン」と呼ばれる各種の生理活性ペプチドが発見され、一酸化窒素(NO)、心房性Na利尿ペプチド(ANP)、エンドセリン(ET)、アドレノメデュリン(AM)、サルーシン(SAL)などが挙げられる。本研究では、頚部頚動脈内膜剥離術を行う患者を対象とし、術中の頚静脈血内の生理活性ペプチドを解析することにより、脳血流自動調節能や過灌流と血管ホルモンとの関連を明らかにすること目的としており、初年度は症例数の蓄積とサンプリングを行った。これらの患者の、術前・術中・術後のパラメーターの解析において、頚動脈内膜剥離術術中の新規脳虚血病変の出現の有無は、外頚動脈の閉塞の影響を強く受けること。種々の生理活性物質の産生は、脳循環代謝の影響を強く受けることが予想されるが、術前の脳温イメージングによる解析で、不完全な側副血行路による脳温の変動は、術中の新規脳虚血病変出現の予知因子となり得ること。頚部頚動脈狭窄による脳循環の低下がもたらす低酸素脳組織を、1-(2-18F-fluoro-1-[hydroxymethyl]ethoxy) methyl-2-nitroimidazole (18F-FRP170)を用いて同定した検討では、頚動脈内膜剥離術により18F-FRP170の代謝経路が改善し、さらには認知機能の改善に関与していることが明らかとなり、論文報告を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
頚部頚動脈内膜剥離術を行う患者を対象とし研究を行っている。内膜剥離術中に露出される内頚静脈に小児用の中心静脈カテーテルを留置し、手術中経時的に採血を行う。採血のタイミングは、①頚動脈遮断前、②頚動脈遮断20分後、③頚動脈遮断を解放し血流再開後1分、④血流再開後5分、⑤血流再開後20分の5点とし、手術操作に関連しない研究協力者が行う。得られた血液は直ちにEDTA入りの採決管に入れ、4℃で20分間遠心し血漿を分離する。得られた血漿をクライオチューブに分注し液体窒素で急速冷凍後に-80℃で保存する。初年度で、20例の手術を行い、術中のモニタリングと、頸静脈血サンプリングを行った。症例数としては、ほぼ予定通りであり、経過中に過灌流を示した症例が含まれており、対象比較研究として成立可能と判断している。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度同様に、頚部頚動脈内膜剥離術対象患者からのデータ収集と頚静脈血サンプリングを行い、症例数を増やしていく。平成30年度からの繰り越し研究費を平成31年度予算に上乗せし、頸静脈血中の生理活性物質について解析を予定している。具体的には、一酸化窒素(NO)、心房性Na利尿ペプチド(ANP)、エンドセリン(ET)、アドレノメデュリン(AM)、サルーシン(SAL)等について検討し、術前の脳循環予備能、術中脳表の酸素飽和度による虚血強度、及び術後の脳血流SPECTによる過灌流の有無と対比検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
頚部頚動脈内膜剥離術を行う患者を対象とし、術前のSPECT検査を行った。内膜剥離術中に露出される内頚静脈に小児用の中心静脈カテーテルを留置し、手術中経時的に採血を行った。得られた血漿をクライオチューブに分注し液体窒素で急速冷凍後に-80℃で保存した。初年度で、20例のサンプリングが完了した。静脈血中の生理活性物質の解析も検討したが、まとまった量での解析に、初年度予定していた費用では不足するため、未使用予算を繰り越しし、次年度の予算と合算した上で解析費用に回すことととしたために次年度使用額を発生させた。
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