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2022 年度 実施状況報告書

グリンパティックシステムと脳内酸化ストレスの画像化と解析による神経疾患の診断治療

研究課題

研究課題/領域番号 18K08982
研究機関明治国際医療大学

研究代表者

樋口 敏宏  明治国際医療大学, 臨床医学講座, 教授 (80218700)

研究分担者 梅田 雅宏  明治国際医療大学, 医学教育研究センター, 教授 (60223608)
田中 忠蔵  明治国際医療大学, 医学教育研究センター, 名誉教授 (80163541)
渡邉 康晴  明治国際医療大学, 医学教育研究センター, 准教授 (90454537)
河合 裕子  明治国際医療大学, 医学教育研究センター, 講師 (90555616)
萬代 綾子  明治国際医療大学, 医学教育研究センター, 講師 (20769343)
村瀬 智一  明治国際医療大学, 医学教育研究センター, 助教 (00708943)
研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2024-03-31
キーワードfMRI / 熱刺激
研究実績の概要

脳機能を評価するにあたり感覚と反応の乖離に疑問が生じたことから、感覚刺激に対する脳機能変化について、受容体との関連を調査した。温熱刺激の一つと考えられる「灸」は、伝統医学としてヒトの疾患の治療に用いられてきた。灸は、温熱刺激と併せてTRPV1などの熱受容体の閾値となる43℃を超える刺激を含んでいる。今回、MRI装置内で利用できる電気温熱刺激装置(電気温灸器)および、火や煙が出ない温灸を使用した。電気温灸器は急峻な上昇・下降を特徴とする熱刺激を与え、一温灸はゆっくりとした上昇および下降の熱刺激を与える特徴がある。

刺激部位は下腿にある経穴(足三里)とし、3T-MRIで脳機能画像を取得した。繰り返し刺激を与えるブロックデザインの刺激中にfMRIデータを取得し、さらにその熱刺激前後に安静時fMRIのデータを得た。電気温灸器のスイッチオンの時間を参照関数とした一般線型結合モデル処理では両側の島に賦活が認められた。さらに独立成分分析による解析では熱刺激時間より長い応答時間を含む成分が抽出され、その応答時間関数を参照関数として一般線形結合を用いてfMRIデータを処理した。島に加えて帯状回、2次体性感覚野などの賦活が認められた。応答時間が長引くのは、一度TRIPV1などのチャンネルが開くと数秒間継続することが報告されていることから、43℃より低い温度になってもしばらく痛覚が賦活されるためと考えられる。また、これらの電気温灸器による熱痛刺激の前後での安静時の脳機能結合について、温灸前後では小脳を含む範囲に限定された結合増加や、側頭極と小脳の一部を含む機能結合現象が認められた。鍼灸刺激による小脳の賦活は複数報告されており、その反応の持続時間などが今後の検討課題であると考えられる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

これまでに脳内の水移動を可視化するために拡散強調画像法で心拍に同期した脳の MRIを取得し、被験者の動き抑制をレトロスペクティヴに補正する技術を導入して処理を進めた。3T-MRIではスペクトルエディティングなどの方法でしか分離計測できなかったGSHやGABAなどの微量神経アミノ酸について、高磁場の7T-MRIでは他のアミノ酸と同時にダイレクトに観測可能であることを示すことができ、そのマップを得た。さらにfMRIのBOLD効果を定量化し、脳活性について調査した。一部の疾患で鈍化する指先の感覚を定量化するため、指先に2種類のランダムに刺激を実施し、その識別と脳のBOLD信号変化率を年齢や3D-MRIによる脳萎縮率との関連を解析した。39歳から60歳代 の健常者では全員で0.4%-1%の間で2次体性感覚野の信号変化が認められた。この刺激における脳の応答は、年齢に対しても、公開されている脳画像解析プログラムBAADを用いた脳萎縮率とも有意な相関は無いことが示された。また、TRPV1などの熱受容体の閾値となる43℃を超える刺激を与えた際に生じる脳機能の反応について検討した。使用した熱刺激は「急峻な上昇・下降を特徴とする熱刺激」と「ゆっくりとした上昇および下降の熱刺激」の2種類とした。刺激のスイッチオンの時間を参照関数とした一般線型結合モデル処理では両側の島に賦活が認められた。さらに独立成分分析による解析では熱刺激時間より長い応答時間を含む成分が抽出され、その応答時間関数を参照関数として一般線形結合を用いてfMRIデータを処理した結果、島に加えて帯状回、体性第2感覚野などの賦活が認められた。

今後の研究の推進方策

加温変化に応答する神経発火は、45℃を超えると減少することも報告されている。このことから、45℃以下の温度変化時間と45℃以上の持続時間に数秒を加えた時間を賦活時間とした2つの参照関数を用いたfMRIデータを解析することが必要であると考えられ、次年度行う計画である。また、温灸刺激については43℃以上を賦活時間として解析したが有意な賦活領域は抽出できなかった。温灸刺激では一般的な体性感覚刺激と異なり緩やかな温度変化が与えられるため、賦活時間などの検討が課題である。加齢による反応の変化を含めて結果を精査する。また、これまでに予定していたBOLD信号変化率を年齢および脳萎縮率と比較する研究を遂行し、BOLD信号・年齢・脳画像解析プログラムを用いた脳萎縮率などのパラメータと拡散強調画像法を用いて捉える脳内水移動との関連を検討する。

次年度使用額が生じた理由

他業務との兼ね合いにより十分な実験時間を確保できなかったことに加え、共同研究者との日程調整がつかず予定していた謝金の支払いを必要としなかった。また、国際学会への参加を見送ったことから次年度使用額が生じた。

次年度はデータの追加収集を行うとともに、既に取得したデータの解析を進める。そのため、被験者等への謝金や解析環境の整備、成果発表のための論文投稿費として拠出する予定である。

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公開日: 2023-12-25  

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