研究課題
脳腫瘍の一種である膠芽腫は外科的治療、放射線治療、化学療法などの集学的治療を行ってもここ数十年目立った予後の改善がない。これら従来の治療に抵抗性を示す大きな原因の一つにがん幹細胞の存在が近年指摘されているが、詳細は解明されていない。我々は、膠芽腫のがん幹細胞が免疫チェックポイントタンパク質であるOX40を発現することを独自に見出した。OX40は活性化したT細胞に発現する免疫共刺激分子であり,メモリーT細胞の維持に重要な働きをしている。OX40がT細胞以外で発現していることは、膠芽腫を含め知られていない。本研究は、グリオーマ形成におけるOX40の役割を明らかにすることで、OX40がグリオーマ治療の分子標的に成り得るかどうかを明らかにする。グリオーマのがん幹細胞は、遺伝子解析によりMesenchymal (MES) typeとProneural (PN) typeに分類される。MES typeは増殖能が高く、高い治療抵抗性を示し、より悪性度が高い。我々は、MES typeのグリオーマがん幹細胞が免疫関連分子であるICOSLGを発現し、IL-10産生性制御性T細胞を増幅することを解明した。MES typeのグリオーマがん幹細胞におけるOX40の発現は、免疫組織化学法では認めなかった。しかし、OX40のリガンド(OX40LG)がMES typeのグリオーマがん幹細胞の細胞膜に分布していることを見出した。OX40LGが免疫応答を介してグリオーマの微小環境の形成に役割を果たしている可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
膠芽腫や様々ながん腫において、OX40LGは腫瘍免疫に関連していることが報告されている。我々は、OX40LGがMES typeのグリオーマがん幹細胞の細胞膜に分布していることを見出した。
[1]OX40LGの発現がグリオーマの悪性度と関連するかを検証するために、膠芽腫患者の腫瘍組織を用いて免疫組織化学を行い、OX40LG発現とWHO grade(悪性度)との関連、OX40LG発現と生存期間について解析する。[2]shRNA発現ウイルスベクターを用いて、OX40LGの発現をノックダウンしたがん幹細胞を作成し、マウス脳に移植し生存期間を評価する。得られた脳腫瘍検体を用いて、腫瘍サイズや腫瘍の浸潤について解析する。
予定よりも少ない試薬を用いて効率よく実験を遂行できたため、次年度使用額が生じた。消耗品費(解析用試薬と実験用動物)に充当する。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 1件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 6件) 図書 (1件)
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