研究課題/領域番号 |
18K08984
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研究機関 | 広島国際大学 |
研究代表者 |
中山 寛尚 広島国際大学, 保健医療学部, 講師 (40512132)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 軸索誘導因子 / ネトリン / 転移 / 髄芽腫 / 癌幹細胞 |
研究実績の概要 |
小児脳腫瘍である髄芽腫(medulloblastoma)は、小脳に発症する悪性腫瘍である。これまでに、髄芽腫細胞が分泌する『軸索誘導因子netrin-1』が髄芽腫細胞の浸潤性や血管新生を誘導することを見出した。そこで、netrin-1が髄芽腫癌幹細胞とその周辺環境組織に影響を与える『癌微小環境制御因子』ではないかと考えた。本研究では、髄芽腫癌幹細胞におけるnetrin-1とそのレセプターの役割を解明し、髄芽腫幹細胞のnetrin-1シグナルを標的とする阻害剤の探索・開発を行い、新たな髄芽腫治療薬の開発を目指す。 本年度はnetrin-1とレセプターのひとつUNC5Cについて基礎検討を行った。Netrin-1リガンド(全長)にflagタグをN-またはC-末端に付加して、小麦無細胞発現系を用いて合成を行った。同時にnetrinレセプターのひとつUNC5Cにbiotinタグを付加して合成を行った。合成タンパク質を用いて、リガンドとレセプターの結合を評価するAlphaScreenを行った。しかし、netrin-1とUNC5Cによる結合は非常に弱い結果であった。一方で陽性コントロールであるKCTD10-CUL3結合では高い値が出ていたためAlphaScreen自体は問題ないと考えられる。 次にnetrin-1を結合に必要な最小部分に変えて検討を行った。断片としてC-末端からドメインごとに削ったものを4種類作成した。各種プラスミドを用いて、コムギ無細胞タンパク合成を行い、各種netrin-1変異体のタンパク合成をウエスタンブロットにて確認した。Netrinシグナル阻害剤のスクリーニング系の作成は本研究において重要であるため、今後も引き続き行う予定である。今後は、作成したnetrin-1断片とUNC5Cレセプタータンパク質を用いてAlphaScreenを行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度は、netrin-1阻害剤のスクリーニングの準備(各種netrin-1断片の作成)を進めることができた。コロナ禍において本学への入構ができない時期もあったことから、スクリーニングが中断したが、引き続き解析を続ける予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度においては、netrin-1およびレセプター群をCRISPR-Cas9技術によるノックアウトを行い、EMTとの関連を精査する。とくにTGFbシグナルとの関係を明らかにするため、TGFbリガンドで髄芽腫細胞を刺激してnetrin-1リガンドとレセプター発現に影響をもたらすのか検討する。さらにnetrin-1阻害剤の開発のためアルファスクリーニングアッセイを進めていきたい。これらの成果をもとに、動物実験にて効果があるかどうか評価を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍において学内入構制限が3か月ほどあり、その間、実験の遂行や消耗品の購入ができなかった。そのため予定していた実験を中断し遅れが生じたため、次年度に繰り越して検討を続けたいと考えている。次年度では、netrin-1とUNC5Cレセプターの結合実験を引き続き検討することを予定している。
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