研究課題/領域番号 |
18K08986
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研究機関 | 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛 |
研究代表者 |
川内 聡子 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 防衛医学研究センター 生体情報・治療システム研究部門, 講師 (20506505)
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研究分担者 |
佐藤 俊一 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 防衛医学研究センター 生体情報・治療システム研究部門, 教授 (90502906)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 軽傷頭部外傷 / 衝撃波 / 酸化ストレス / 血液脳関門 / 神経炎症 / パーオキシナイトライト / 一酸化窒素 |
研究実績の概要 |
本研究は,衝撃波に起因するラット頭部外傷モデルを対象に,その病態と機序を明らかにするため,①酸化ストレス,②血液脳関門の破綻,③アストロサイト,ミクログリアの活性化,④神経炎症の各事象の脳内分布と発生の時間変化を明らかにすることを目的とする。本年度(平成31年・令和元年度)は,細胞毒性の強い酸化(ニトロ化)産物パーオキシナイトライト(ONOO-)の発生の時間変化を調べ,これと活性化アストロサイトの発生の関係につき調べた。 イソフルラン麻酔下にSDラット頭部を固定し,左頭頂部に直径4 mmのレーザー誘起衝撃波(LISW)を1.5 J/cm2(力積36.1 Pa・s)で経頭蓋骨的に適用した。適用後1日,3日,7日,28日に灌流固定後ラット脳を摘出し,ONOO-のマーカーとして3-Nitrotyrosine(3NT),活性化アストロサイトのマーカーとしてグリア繊維性産生タンパク質(GFAP)を用いた免疫組織化学染色を行った。 ONOO-のマーカーである3NTは,LISW適用1日後に大脳皮質(頭頂部)において増加し,3日後にはさらに増加し,その後減少に転じ7日後にはコントロールと同レベルに戻った。しかしその後再び28日後には3NT陽性細胞が同領域に観察され,酸化ストレスの多相性かつ遷延性の発生特性が明らかとなった。3NT陽性が最も顕著に観察されたLISW適用3日後,GFAP陽性細胞(活性化アストロサイト)は3NT陽性領域を取り囲むように増加した。ONOO-は,BBB破綻を引き起こすと考えられることから,この結果は活性化アストロサイトがBBB破綻を来した領域の外側で増加したことを示唆しており,活性化アストロサイトによる病変の拡大を意味していると推察された。次年度は,これらの結果がさらに神経炎症の発生とどのように関係するか検討を進める計画である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究が目的とする次の4項目:①酸化ストレス,②血液脳関門の破綻,③アストロサイト,ミクログリアの活性化,④神経炎症,の解析のうち,①~③について実験系を確立し,一定の結果を得ることができた。また神経組織の免疫組織化学染色および高度観察技術を有する国外研究機関との連携を開始し,効率的に研究を進められる体制が整った。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は,神経炎症を中心にその発生の時空間特性を解析する。これまでに得られた結果に基づき,候補となるマーカー物質を幅広く選定し解析を進める計画である。また国外研究機関との連携により,研究をスピードアップし,新規知見への到達を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は,前期の実験過程で当初予定になかった高額な光学部品が必要となったため,後期に予定していた国外旅費(国際学会発表)が足りなくなる事態となった。このため前倒し支払請求により次年度分300,000円を請求した。この国外旅費は,日程の短縮と格安航空券の手配により約5万円の黒字となり,同差額が生じた。一方,次年度は本年度の成果に基づき神経炎症マーカーを幅広く探索する計画であり,そのマーカー(抗体)の購入に使用する予定である。
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