研究課題
本研究は,衝撃波に起因するラット頭部外傷モデルを対象に,その病態と機序を明らかにするため,①酸化ストレス,②血液脳関門の破綻,③アストロサイトの活性化等の各事象の脳内分布と発生の時間特性を明らかにすることを目的とする。本年度(令和2年度)は,①酸化ストレスの詳細について調べるため,脂質過酸化物4-ヒドロキシのネナール(4HNE)の発生につき検討を行った。イソフルラン麻酔下にラット頭部を固定し,左頭頂部に直径4 mmのレーザー誘起衝撃波(LISW)を1.5 J/cm2(力積36.1 Pa・s)で経頭蓋骨的に適用した。適用後1日,3日,7日,28日に灌流固定後ラット脳を摘出し,4HNE抗体を用いた免疫組織化学染色を行った。その結果LISW適用後7日において,大脳皮質の広範な領域の毛細血管壁において4HNEの発現を顕著に認めた。4HNEは血管壁の透過性や膜受容体および関連酵素の活性に影響を与えることが知られ,脳血管異常を引き起こしているものと推察された。本研究期間を通じて以下のことが明らかとなった。ラット脳に衝撃波を曝露すると,1日後から大脳皮質においてニトロ化ストレス(ONOO-の発生)が増加し,3日後にはさらに顕著となり,7日後には減少し再び28日後に増加傾向となり,酸化ストレスの多相性かつ遷延性の発生特性が明らかとなった。ニトロ化ストレスが最も顕著であった衝撃波曝露3日後,活性化アストロサイトはONOO-陽性領域を取り囲むように増加した。ONOO-は,BBB破綻を引き起こすと考えられ,この結果は活性化アストロサイトがBBB破綻を来した領域の外側で増加したことを示唆しており,活性化アストロサイトによる病変の拡大を意味するものと推察された。一方,脂質過酸化物4HNEの発現はニトロ化ストレスに比べて遅発性かつ広範であり,異なる現象・メカニズムの存在が示唆された。
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Neuroscience Letters
巻: 749 ページ: 135722
10.1016/j.neulet.2021.135722.
Frontiers in Neurology
巻: N/A ページ: N/A
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