研究課題
中枢神経原発悪性リンパ腫 (primary central nervous system lymphoma, PCNSL)は高齢に伴う発症が多いため高齢化社会の近年、急速な増加傾向にある。PCNSLに対する治療としてメソトレキセート大量化学療法が選択されるが、薬物が血液脳関門(BBB)を通過しないため大きな効果は見込まれず、全脳放射線療法(WBRT)が実施されるも加療後の生存期間は通常12~18ヶ月と短く、脳萎縮や認知症等、甚大な副作用が出現し、満足のいく結果が得られず、更にリツキシマブ等の抗体薬も試みているが、脳-血管関門透過性が低いため有効性が低い。この状況打開のために、根治を目指した新たな治療法の開発が急務である。本研究課題では腫瘍溶解ウイルス及び合成ノッチ受容体を活用したPCNSLに対する免疫療法の確立を目指した基盤研究を実施している。当年度はヒト由来PCNSL細胞株の樹立を試み, 9種類のPDC(patient-derived cell)を新たに確立した。全ての細胞株が免疫染色でCD20陽性であったことからB細胞リンパ腫を反映するPCNSL細胞株パネルであると考えられた。またその殆どはNF-kB経路の恒常的活性化が想定されるサブタイプであった。PCNSL-PDX株に対するウイルス感染感受性を確認したところhPIV-3感染効率が予想より低かったため、代替として、同じパラミクソウイルス科に属するニューカッスル病ウイルス(NDV)を用い検討を行った。その結果、PCNSLはNDVに対する感染感受性が極めて高いことが判明したため、NDVのエンベロープタンパク質HNに対するマウスモノクローナル抗体を作製した。現在、感染細胞を認識できる抗体3種類が取得でき、次年度は獲得した抗体遺伝子を用い合成ノッチ受容体を構築する予定である。
2: おおむね順調に進展している
現在までに9種ヒト由来PCNSL細胞株の樹立し、安定的に増殖できる培養系を構築した。PCNSL-PDC に対するhPIV-3感染効率が予想よりも低かったが、同じパラミクソウイルス科に属するニューカッスル病ウイルス(NDV)がきわめて高効率にPCNSに感染することを見出し、NDVエンベロープに対するモノクローナル抗体の作製にも成功している。
前年度からの継続として、合成ノッチ受容体の作製を進める。PCNSLに対するhPIV-3感染効率が予想よりも低いことが判明したが、代替ウイルスであるNDVの感染効率が高いことが見出されたため、NDVを標的とする合成ノッチ受容体の構築も並行して行う予定である。現在、モノクローナル抗体の可変領域部位の遺伝子クローニングを実施し、合成ノッチ受容体のコンストラクトを構築する。また、樹立したPCNSLを免疫不全マウスに移植し、腫瘍形成能や浸潤能を確認するとともに、腫瘍組織の病理組織学的考察を行う。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 備考 (1件)
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