研究課題
中枢神経原発悪性リンパ腫 (primary central nervous system lymphoma, PCNSL)は高齢に伴う発症が多いため高齢化社会の近年、急速な増加傾向にあり、根治を目指した新たな治療法の開発が急務である。本研究課題では腫瘍溶解性ウイルスを用いたPCNSLの細胞障害ならびに、ウイルス抗原に対する免疫反応を基盤とした免疫治療を併用することで、より高い抗腫瘍効果を発揮できるシステムの構築を目指している。特に、ウイルス感染腫瘍細胞に対して特異的に殺効果を発揮できる人工免疫細胞を樹立することで、新たな免疫療法の開発に役立てる。本年度は、昨年度までに樹立した、患者由来PCNSL細胞株 (patient-derived cell: PDC)の特性解析、NDVモノクローナル抗体の性状解析、ならびに、NDV抗体を搭載した合成ノッチ細胞の構築を行った。また、PDCの3次元の培養条件について、多角的に検討を行った。樹立したPCNSLを免疫不全マウスに移植し、腫瘍形成能や浸潤能について確認したところ、移植した腫瘍細胞は脳血管周囲において顕著に浸潤・増殖しており、血管形成因子との相互作用が示唆された。次に、パラミクソウイルス科に属するニューカッスル病ウイルス(NDV)の感染感受性について検討を行った結果、PCNSLはNDVに対して高い感染感受性を有することが判明した。フローサイトメーターを用いて、感染細胞膜上におけるNDVエンベロープタンパク質HNの発現について、作製したマウスモノクローナル抗体を用いて確認したところ、細胞膜上における発現が確認された。また、上記の抗NDV-HN抗体の可変領域の抗体遺伝子をクローニングし、合成ノッチ遺伝子カセットに導入した。導入細胞膜上での合成ノッチ受容体の発現を確認した。
2: おおむね順調に進展している
現在までに、患者由来PCNSL細胞株 (patient-derived cell: PDC)の樹立および特性解析が終了している。また、ニューカッスル病ウイルス(NDV)がPCNSLに高い感染性を有することを明らかにした。また、NDVエンベロープタンパク質HNに対するマウスモノクローナル抗体遺伝子をクローニングし、合成ノッチ遺伝子カセットに導入しJurkat細胞に定常的に発現させることに成功した。
前年度からの継続として、改変ノッチ受容体を活用した腫瘍抗原特異的な合成ノッチT細胞の樹立と性能評価を行う。続いて、改変Notch受容体を用いて、遺伝子改変T細胞が、腫瘍細胞と接触した時に、CARを発現誘導できる誘導型CAR-Tシステムを構築し、本細胞の抗腫瘍効果について検討する。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 4件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (1件)
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