研究課題/領域番号 |
18K09001
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
高島 康郎 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50621083)
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研究分担者 |
山中 龍也 京都府立医科大学, 医学部, 教授 (20323991)
川口 淳 佐賀大学, 医学部, 教授 (60389319)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | メタボローム解析 / N型糖鎖 / グリオーマ幹細胞 / 間葉系幹細胞 / がん免疫 / マイクロRNA / 膠芽腫 / 中枢神経系原発リンパ腫 |
研究実績の概要 |
前年度に引き続き、遺伝子マーカーおよびリプログラミング因子の候補選定を行った。【中枢神経系原発リンパ腫(PCNSL)】31例の検体においてがん免疫遺伝子の発現を解析した結果、CD40(high), CD70(high), LAG3(high), PD-1(high), PD-L2(low)が予後不良だった。また、ヘルパーT細胞のバランス評価において、Th1(low)、Th2(high)は予後不良を示し、Th1(high)Th2(low)は予後良好を示した。さらにTh1(high)Th2(low)はCD70(low)と、Th1(low)Th2(high)はTIM-3(low)、PD-L2(low)と相関した。40例の検体においてがん免疫マイクロRNA(miRNA)の発現を解析した結果、miR-101/548b/554/1202の組合せで予後予測が可能であった。メソトレキセート(MTX)耐性細胞株においてメタボロームとN型糖鎖を解析した結果、細胞型特異的シグナル経路による解糖系亢進、中性およびシアル酸化型高マンノースの増加、シアル酸化型A2G2FおよびA2G2FBの減少がわかった。さらに初発3例、再発1例の検体の解析において、A2G2FおよびA2G2FBは高発現=予後良好、低発現=予後不良の傾向を示した。【膠芽腫】公共データベースを用いた286例において上皮間葉転換(EMT)、間葉系幹細胞(MSC)、およびグリオーマ幹細胞(GSC)遺伝子の発現を解析した結果、MSCおよびGSCの遺伝子発現と予後不良が相関した。また、コックス比例ハザードモデルにより有効なハザード比を示す遺伝子が得られ、これらは複雑な発現相関ネットワークを構築した。同様に571例におけるがん免疫遺伝子の発現を解析した結果、B7-H3, GATA3, LGALS3の組合せで予後予測が可能であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和元年度の実験計画に沿って、遺伝子マーカーおよびリプログラミング因子候補選定のため、PCNSL患者のRNAシーケンス、miRNAマイクロアレイ、糖鎖解析を行った。また、MTX耐性PCNSL細胞株のメタボローム解析および糖鎖解析を行った。その結果、PCNSLの状態を改善する可能性のある複数の遺伝子および糖鎖候補が得られた。また、公共データベースThe Cancer Genome Atlas (TCGA), Chinese Glioma Genome Atlas (CGGA), Kyoto Encyclopedia of Genes and Genomes (KEGG)を用いて膠芽腫における遺伝子発現と予後との相関を調べた結果、EMT, MSC, GSC関連遺伝子の一部が膠芽腫の状態を改善する可能性が示唆され、また、がん免疫関連予後予測因子としてB7-H3, GATA3, galectin-3が示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度の実験計画に沿って、これまでの研究で得られたリプログラミング候補遺伝子をPCNSLおよび膠芽腫の細胞株に導入し、がん細胞の状態を評価する。また、TCGA, CGGA, KEGGなどのデータベースを活用して、さらに有効なリプログラミング因子の探索を継続する。また、MTX耐性PCNSL細胞株のプロテオーム解析、レクチンアレイ、糖鎖、細胞接着、細胞骨格に関するin vitro実験やデータ解析を行い、成果を研究に反映させる。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成30年度の旅費過払い分の払い戻し金など。令和2年度物品費、旅費、その他として使用する。
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備考 |
山中龍也,高島康郎『再発脳腫瘍モデルにおけるがんの代謝経路とATPエネルギー産生経路の解明』京都府立医科大学報道発表【論文掲載】2020年3月
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