研究実績の概要 |
本研究は、神経膠腫に対する標準治療薬であるテモゾロミド(TMZ)とその代替治療薬ACNU(ニトロソウレア薬)による神経膠腫細胞へのhypermutator形質発生度及びその分子機序を解析し、薬剤の種類や腫瘍細胞の背景形質や遺伝子異常のパターンによる相違を明らかにすること。その結果、TMZ治療におけるhypermutator化の危険因子を探索し、神経膠腫治療の基盤となるTMZ治療の良好な対象群を解明することを目的とする。 前年から継続して、研究室で保有するヒト・グリオーマ細胞株、TMZおよびACNUへの耐性の主因であるMGMTを強制発現した細胞株を用いて、TMZならびにACNUを低濃度、長期間暴露し、生存した細胞を継代することで、これら薬剤へ耐性を示すサブクローンを樹立した。特にU251およびLNZ308株からの樹立細胞株に対して、TMZおよびACNUで治療し、MTSアッセイ等で親株よりも高いIC50濃度を確認した。TMZおよびニトロソウレア薬へ耐性に強く関与するMGMTやミスマッチ修復(MMR)関連タンパクであるMSH2, MSH6, MLH1, PMS2に関して、immunoblot法を用いて発現量の変化を検討したが、U251・LNZ308親株では発現がみられないMGMTの発現がサブクローン毎に異なるものの認められる株が多かった。一方、MMRタンパクについては親株と著変はこれまでのところみられていない。さらにMLPA (Multiplex Ligation-dependent Probe Amplification) 法による神経膠腫に高頻度にみられる遺伝子変異を解析したが、親株とパターンの変化は出現していなかった。現在、これら親株と耐性株を用いて次世代シークエンサーによる遺伝子パネル検査を予定しており、耐性に関与する変異が明らかとなることが期待される。
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