研究課題/領域番号 |
18K09007
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
小林 一太 日本大学, 医学部, 准教授 (20366579)
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研究分担者 |
渡辺 充 日本大学, 医学部, 助教 (00792673)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | パーキンソン病 / 脳深部刺激療法 / マイクロレコーディング |
研究実績の概要 |
パーキンソン病は大脳皮質-大脳基底核を中心とした運動制御機能に異常をきたした状態であるがその病態については不明な点が多い。本疾患に対して、大脳基底核回路の一部である視床下核(subthalamic nucleus: STN)を標的部位とする脳深部刺激療法(deep brain stimulation: DBS)が奏効する。 DBSに用いる刺激電極を脳内に留置する手術では、術中に微小電極を用いた脳深部の神経活動記録 (Microelectrode recordeing: MER)を併用することで、電極の留置部位の標的構造を確実に同定することができる。こうして得られた MER を分析することは、ヒト脳の神経生理および疾患の病態を解明する一助となる。 本研究は、パーキンソン病患者から微小電極を用いて記録される脳深部の神経活動記録を解析し、①パーキンソン病患者の視床下核の単一ニューロン活動の発火頻度と神経活動パターンを分析し、②発火頻度、神経活動パターンの所見が視床下核内の領域ごとにどのような違いがあるのかを分析する。また、③パーキンソン病の重症度や無動、固縮、振戦といった各運動症状と発火頻度や神経活動パターンとの関連を分析する。これらの分析を行うことで、未だ解明されていないパーキンソン病の病態のなかで、発火頻度や神経活動パターンの異常がパーキンソン症状の発現に果たす病態機序を明らかにし、④脳深部刺激療法の至適電極留置部位を判定する指標とするための研究基盤を確立することが目的である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに、視床下核の脳深部刺激療法の両側手術を行ったパーキンソン病患者3例(計 6側)から脳深部活動電位記録のデータを収集し、記録した神経活動を局所電場電位分析用に low-pass filter を、スパイク発火分析用に high-pass filter 処理を終了している。 加えて、スパイク波形分析による単一ニューロンのスパイクの弁別は3側で終了しているため。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き症例の蓄積を行うと共に、1.単一ニューロンのスパイク発火時間のデータから発火頻度と神経活動パターンの分析を行う。神経活動パターンは次の分析を行う。①単一ニューロンの発火時間データから周波数分析で統計学的に有意水準を越えるβ帯域の神経活動を持つニューロン(βニューロン)を同定する。②バースト発射の程度をPoisson “surprise” method (Legendy 1985, Wichmann 1999)を用いてBurst Index (BI)として数値化して算出する。③このほかにL statistic法 (Goldberget 2002, Kaneoke 1996)等用いて発火パターン分析を行う。2.発火頻度、神経活動パターンの所見が視床下核内の領域ごとにどのような違いがあるのかを分析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用が生じた理由:購入予定であった信号解析装置(70万円で計上)よりも性能の高い解析装置が発売見込みであったため、購入を控えていたため。 使用計画:本解析装置に、波形分析によって単一ニューロンのスパイクに弁別されたニューロンのスパイク発火のタイミングの時間データを取り込んで神経活動パターンの分析を行う。
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