研究課題/領域番号 |
18K09013
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研究機関 | 千葉県がんセンター(研究所) |
研究代表者 |
磯貝 恵理子 千葉県がんセンター(研究所), 発がん研究グループ 実験動物研究室, 上席研究員 (40300917)
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研究分担者 |
若林 雄一 千葉県がんセンター(研究所), がんゲノムセンター 実験動物研究部, 部長 (40303119)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | マウスモデル / 神経系腫瘍 / 神経発生 |
研究実績の概要 |
幹細胞でMeis1をノックアウトしたマウス(KO)では、胎生期E18.5においても大脳皮質の異常が観察された。神経発生が進行しているE14.5では野生型(WT)と比較してradial glia cellsがKOで有意に減少していた。intermediate progenitors と神経細胞は有意差がなかった。そこでE14.5で大脳皮質へのBrdUの取り込みを検討したところ、KOでは有意に減少していた。従って、KOではradial glia cellsの増殖が低下し、神経発生の異常が生じると考えられた。 Meis1高発現マウス神経前駆細胞株NE-4Cを、免疫不全マウスの脳に移植し腫瘍形成への効果をコントロール細胞と比較して観察し、Meis1と脳腫瘍の関連性について検討した。増殖細胞(Ki67)、macrophage/microglia(Iba1)、endothelial cell(CD31)、Epithelial Membrane Antigen(MUC1)、幹細胞(Nestin)、神経上皮性腫瘍(Vimentin)について免疫染色を行ったところ、Meis1高発現細胞移植後の腫瘍では、増殖細胞、macrophage/microglia、CD31陽性血管内皮細胞、Epithelial Membrane Antigen陽性悪性腫瘍細胞が有意に増加していた。同じ細胞株を皮下に移植し5週間腫瘍の大きさを測定した結果、脳内への移植とは逆にコントロール細胞でMeis1高発現細胞と比較して有意に腫瘍体積の増加が観察された。同様にin vitroにおける増殖能はコントロール細胞でMeis1高発現細胞と比較して有意に高かった。従って、Meis1は脳内の微少環境、macrophage/microgliaの遊走、血管新生、腫瘍の増殖、悪性化に関与している事が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
胎生期におけるMeis1ノックアウトマウスの大脳皮質の解析を進め、異常が生じる機構を検討した。in utero electroporation法により脳の神経幹細胞でMeis1をノックアウトさせ、神経幹細胞から神経細胞に発生する過程で起こる細胞移動へのMeis1の関連性の検討はまだ十分な結果が得られていない。Meis1を高発現させた神経前駆細胞株NE-4Cを免疫不全マウスの脳に移植後に形成された腫瘍を解析して、imageJによる数値化と有意差検定によりMeis1と脳腫瘍との関連性について検討した。脳の微少環境の関連性を検討する目的で、Meis1高発現株移植腫瘍、とコントロール細胞株移植腫瘍、移植していない側の脳の組織で、移植後の腫瘍で発現している遺伝子について比較する。そのために各組織からRNAを抽出し、RNA-Seqを用いて遺伝子発現解析を実施中である。
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今後の研究の推進方策 |
E13.5にin utero electroporation法により脳の神経幹細胞でMeis1をKOさせ、神経幹細胞から神経細胞に分化する過程で起こる細胞の移動をE15.5まで追跡し、大脳皮質の発生過程における神経幹細胞の移動に伴う分化にMeis1が関連する事を更に個体数を増やし詳細に解析する。大脳皮質の異常が発生過程における細胞のアポトーシスにより起こっている可能性もあるので、cleaved caspase3 抗体による免疫染色により細胞死を検討する。 Meis1を高発現させた神経前駆細胞株NE-4Cを免疫不全マウスの脳に移植して腫瘍形成への効果を観察し、Meis1と脳腫瘍との関連性についてのさらに固体数を増やして検討する。脳の微少環境の関連性を検討するため、移植後の腫瘍で発現している遺伝子について、Meis1高発現株移植腫瘍、とコントロール細胞株移植腫瘍、移植していない側の脳の組織で比較し、どのような分子が脳内で機能して悪性腫瘍を形成するか検討する。そのために各組織からRNAを抽出してRNA-Seq、リアルタイムPCRを用いて遺伝子発現解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
マウス脳への移植実験装置一式を計上していたが、がんセンター研究所の経費で購入する事になった。必要なプラスミドや抗体は多数だったが、いくつかは購入済みだった。 マウス固体や胎仔の実験を進める為のマウス、免疫力不全マウス、免疫染色に必要な抗体などを購入する予定。
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