幹細胞でMeis1をノックアウトしたマウス(KO)では胎生期E18.5で大脳皮質が薄い異常が観察された。大脳発生進行中のE14.5では、radial glia cellsがKOで有意に減少し大脳皮質へのBrdUの取り込みもKOで有意に減少した。大脳皮質の異常が発生過程の細胞死による可能性を検討する為cleaved caspase3を免疫染色したが有意差はなかった。従ってKOではradial glia cellsの増殖が低下し神経発生の異常が生じると考えられた。E13.5にin utero electroporationにより脳の神経幹細胞でMeis1をKOし神経幹細胞から神経細胞に分化する過程での細胞移動をE15.5まで追跡したところ有意な減少がKOで観察され、大脳神経幹細胞の移動に伴う分化へのMeis1の関連が示唆された。 マウス神経前駆細胞株NE-4CでMeis1高発現株を作製し免疫不全マウスの脳に移植して腫瘍形成への効果を観察しMeis1と脳腫瘍の関連性を検討した。増殖細胞、macrophage/microglia、endothelial cell、Epithelial Membrane Antigen、幹細胞、神経上皮性腫瘍の免疫染色では、Meis1高発現細胞移植後の腫瘍でこれらが有意に増加していた。同じ細胞株を皮下に移植した結果脳内移植とは逆にコントロール細胞で有意に腫瘍体積の増加が観察された。従ってMeis1は脳内における悪性化に関与する事が示唆された。寄与する遺伝子の探索のため移植腫瘍からRNAを抽出し遺伝子発現解析を実施した結果、glioblastomaや神経分化に関わる遺伝子が上げられた。従って大脳発生に関わるMeis1が脳腫瘍発生に関与することが示唆され、これらの解析は脳腫瘍発症機構解明にもつながると考えられる。
|