研究課題
エクソソームやマイクロベシクルなどの細胞外小胞は、細胞間の情報伝達を担い、疾患の病態形成に重要な役割を果たしている。滑膜マクロファージは、滑膜内の主要な細胞成分であり、変形性関節症および関節リウマチなどの関節疾患の病態形成に重要な役割を担うが、この滑膜マクロファージ由来細胞外小胞の機能については知られていない。我々は、超遠心法によりマクロファージ由来細胞外小胞を単離した後に、関節構成体に及ぼす影響を解析した。結果、炎症性マクロファージは、細胞外小胞を介して、MMP13やADAMTS5、IL-6といった軟骨細胞の異化因子放出を促進し、軟骨基質分解を亢進することを明らかにした。この炎症性マクロファージ由来細胞外小胞による軟骨変性メカニズムを解明するために、炎症性マクロファージ由来細胞外小胞で刺激した軟骨細胞に対して、RNAシークエンスを用いた網羅的遺伝子解析を行った。遺伝子オントロジー解析の結果、細胞活性や炎症シグナルに関わる標語が上位に同定された。これらの結果から、炎症性マクロファージは、細胞外小胞を介して、軟骨細胞のパイロトーシスを誘導すると仮説づけ、検証実験を行った。炎症性マクロファージ由来細胞外小胞刺激軟骨細胞では、通常のマクロファージ由来細胞外小胞刺激軟骨細胞と比較し、軟骨細胞の細胞死がみられた。また、炎症性マクロファージは細胞外小胞を介して、軟骨細胞中のCaspase11およびGSDMDの発現を増加させることを示した。以上の結果から、炎症性マクロファージ由来細胞外小胞は、軟骨細胞のパイロトーシス惹起に関与することを証明した。本研究成果から、軟骨細胞のパイロトーシスを抑制する手法が、今後の関節疾患の治療標的となりえることが示唆された。
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