『超高齢化社会』に突入した我が国では、骨粗鬆症性骨折のさらなる増加が予想される。骨粗鬆症性骨折は、骨脆弱性、骨再生能低下のために、遷延治癒、偽関節、手術治療を行っても、内固定に用いた金属脱転などが生じうる。近年、骨の再生を促進する手法として、骨芽細胞等の培養細胞や多血小板血漿を患部に移植する手法が試みられている。当該細胞本研究で用いる完全合成の自己組織化ペプチドは生体環境に近い中性のpHで十分な強度を発揮し、高い生体安全性を発揮し得る。我々はこれまで移植細胞の足場(scaffold)と予測される自己集合体ペプチドゲル(SPG-178)の有効性を明らかにしてきた(科研費若手研究(B):平成25~26年、基盤研究(C):平成27年~29年)。本研究ではこれまでの細胞移植の足場の併用効果およびその作用機序を追究し、骨再生に対し、臨床応用の段階まですすめることを目的とする。SPG-178と分化したMC3T3-E1との2次元培養を行い、24時間後ALP、actin染色をを行ったところ、いずれもコントロールに比較し、発現が増加していた。SPG-178単体では、骨再生の足場のみであり、積極的な骨形成を得るためには、骨芽細胞を活性化する薬剤が必要である。今回、アナボリック効果をもつ骨粗鬆症治療薬であるテリパラチド、ロモソズマブとの併用効果について検証した。ラット大腿骨欠損モデルに対し、テリパラチド+SPG-178、ロモソズマブ+SPG178、骨移植のみ、SPG-178+骨、をケージ内に移植し、2か月間の経過をみたところ、テリパラチド、ロモソズマブ+SPG-178に有意な骨形成を認めた。また、テリパラチドは骨梁を形成しつつ骨癒合していく、ロモソズマブは、骨効果(骨増勢)が強いものの、骨梁形成には乏しいという特徴を認めた。
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