研究課題/領域番号 |
18K09034
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
久木田 明子 佐賀大学, 医学部, 准教授 (30153266)
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研究分担者 |
馬渡 正明 佐賀大学, 医学部, 教授 (80202357)
久木田 敏夫 九州大学, 歯学研究院, 教授 (70150464)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 骨形成 / 老化 / 骨芽細胞 / 骨細胞 / オートファジー / アポトーシス |
研究実績の概要 |
塩基性へリックスループヘリックス(bHLH)型転写因子Nupr1は栄養飢餓などのストレスで誘導される小型の転写因子で、膵臓癌細胞などの癌や病的な状態で発現が亢進し、アポトーシスやオートファジー制御によりストレス応答や細胞の老化に関わることが報告されている。加齢においてはオートファジーが減弱し様々な組織の老化に関わることや、骨の老化においては骨細胞のアポトーシスが亢進することも知られている。Nupr1ノックアウト(KO)マウスでは骨量と骨形成が増加し、in vitro骨芽細胞の分化系においてはosteopontin, osteocalcinなどの細胞外基質タンパク質の合成が亢進し骨芽細胞の分化が亢進していた。そこで、本年度はKOマウスを用いて骨芽細胞や骨細胞におけるNupr1の機能の解析を行った。in vitro骨芽細胞の分化系ではオートファジー関連遺伝子であるFoxo3や Bnip3の発現が上昇し、その上昇はNupr1 KOマウスの骨芽細胞で亢進していた。また、Nupr1 KOマウス由来の骨芽細胞ではアミノ酸飢餓状態においてひきおこされるオートファゴソームの形成が顕著に亢進していた。さらに、骨芽細胞のアミノ酸飢餓は骨芽細胞のアポトーシスをおこし生存する細胞数を減少させたが、Nupr1 KOマウス由来の骨芽細胞では有意に生存細胞数が増加した。また、Nupr1 KOマウスの大腿骨では骨芽細胞が最終分化して形成される骨細胞数が増加していた。さらに、TUNEL陽性の骨細胞数はNupr1 KOマウスの骨で顕著に減少し、骨細胞のアポトーシスが低下していると考えられた。このように、Nupr1は骨芽細胞のオートファジーや骨細胞のアポトーシスを制御し骨の老化に関与することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度はbHLH型転写因子(Nupr1) KOマウスにおいて骨量や骨形成が促進しており、骨芽細胞分化が亢進していることを見出した。本年度においては、そのメカニズムとして骨の老化に関わることが知られている骨芽細胞のオートファジーや骨細胞のアポトーシスにおけるNupr1の新たな機能を明らかにすることが出来た。老齢マウスの解析については、既にいくつかのNupr1 KOマウス(20か月)から脛骨、椎骨及びRNAやタンパク質などを単離し、現在、比較解析のために野生型マウスを維持している。
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今後の研究の推進方策 |
野生型の老齢マウスから脛骨、椎骨及びRNAやタンパク質などを単離し、既に単離した老齢のKOマウス及び若年齢の野生型とKOマウスの骨構造やRNA及びタンパク質等の発現を解析し比較解析を行う。さらに病態モデルマウスを作成し病態における働きを解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
老齢マウスの匹数を追加して増やしており、若干の未使用額を残しているが、次年度に老齢マウスや若齢マウスの骨構造の比較解析やタンパク質及びRNA発現解析を同時行う時に使用する予定である。また、次年度もマウスの維持や病態解析、細胞培養関連器具類、培地等にも使用する予定である。
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