研究課題
骨粗鬆症などの骨疾患において加齢は重要な危険因子であるが、体内に蓄積した老化細胞が病態の原因となることがわかってきた。本研究では、細胞の老化制御に関わる2つの塩基性へリックスループヘリックス(bHLH)型転写因子の骨代謝と骨の老化における役割及びその調節機構を明らかにすることを目的とした。2種類の遺伝子bHLH型転写因子のノックアウト(KO)マウスと野生型(WT)のマウスの大腿骨の海綿骨量を、μCTスキャナーを用いて解析した結果、どちらのKOマウスの場合もWTマウスと比較して骨量が増加していた。骨形態計測を行ったところbHLH-1 (Nupr1) KOマウスにおいて骨芽細胞数の増加と骨形成の亢進が見られたた。bHLH-1 KOマウスから単離した骨芽細胞前駆細胞は増殖能が高く、骨芽細胞特異的な遺伝子の発現が顕著に上昇し石灰化が亢進していた。また、bHLH-1 KOマウス由来の骨芽細胞培養系で、オートファゴソームの形成やオートファジー関連遺伝子であるFoxo3や Bnip3の発現が上昇していた。bHLH-1 KOマウスの老齢マウスを作成し、椎骨の骨量や骨構造解析を行ったところ、老齢bHLH-1 KOマウスの骨量はWTと比較して高く、若年マウスと比較した時の骨量減少率はbHLH-1 KOにおいて顕著に低下していた。さらに老齢マウスの骨細胞では老化細胞の指標となるマーカー遺伝子p16とともにbHLH-1の発現も上昇していた。そこで、老齢のbHLH-1 KOマウスの骨細胞における老化細胞関連遺伝子の発現を解析したところ、WTと比較してp16やp21の発現が低下していた。さらに、骨芽細胞にshRNAレンチウイルス感染させbHLH-1の発現を抑制するとp16やp21の発現が低下した。bHLH-1は、老齢マウスにおける老化細胞の蓄積と加齢による骨量減少に関与する可能性が示唆された。
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FASEB J.
巻: 35 ページ: e21281
10.1096/fj.202001795R.