研究課題/領域番号 |
18K09044
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
岩本 卓士 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (10348675)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 母指CM関節症 / 装具療法 / 3Dプリンティング |
研究実績の概要 |
本研究はCT画像に基づく体表面データおよび骨関節位置情報から、手指変形性関節症に対するオーダーメイドの3Dプリンティング治療装具を開発し、さらに治療前臨床データから装具療法有効性を予測する評価システムを確立することを目的として開始した。昨年までは第1段階として健常ボランティアのCT画像から3Dプリンティング装具を作成し可動範囲と固定性のバランスが適切であるかを評価した。 本年度は第2段階として臨床試験を開始し、治療装具の安全性の確認および従来型装具との有効性の比較検討を開始した。母指CM関節症を有し装具療法の適応となる被験者を対象とし、CT画像からの体表面形状および骨関節位置情報をもとに第1段階にて設計した2種類の3Dプリンティング装具を作成した。またこれと同時に同一被験者の同一手に対して従来型の硬性装具を作成した。装具装着時による疼痛VAS・上肢機能障害評価法として確立されているDASHスコアの改善度を定期的に調査し、各装具の装着可能時間および被験者満足度についても評価し、従来型硬性装具との比較を開始した。現在までのところ順調に症例を蓄積しており、3Dプリンティング装の装着により一定以上の臨床効果が得られていることから、本成果の一部を国内学会で発表する準備を進めている。2020年3月には豪州での国際学会参加を予定していたが、新型コロナウイルスの影響により中止となりました。 一方で本3Dプリンティング装具の長期装用による耐久性に問題点が浮上したため、耐久性の改善が次年度の課題として考えている。また本装具装着による臨床的な症状改善効果は確認できたが、臨床的効果を裏付ける客観的なエビデンスを構築するために、装具装着下でのCT撮影による動作解析を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度は次年度以降に開始予定であった臨床試験を既に開始しており、治療装具の安全性の確認および従来型装具との有効性を比較検討開始しているため当初の計画以上に進行していましたが、本年度はこの第2段階の臨床試験において3Dプリンティング装具の有効性は確認できたものの装具の耐久性に問題点が生じたため、デザインの修正が必要となりました。最終的な治 療装具デザインを確定し、第3段階として症例数を増加した大規模試験および装具装着下での動作解析による客観的なエビデンス構築を行う予定です。これまでの進行は概ね計画通りの進行度となりました。
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今後の研究の推進方策 |
本3Dプリンティング装具の長期装用による耐久性に問題点が浮上したため、耐久性の改善が次年度の課題として考えている。装具の装着感の向上により装着時間も増えていることから、耐久性の改善は重要課題となっている。製造方法、材質の面での再検討が必要な状態である。また本装具装着の臨床的効果を裏付ける客観的なエビデンスを構築するために、装具装着下での動作解析を行う予定である。モーションカメラあるいはCT撮影による可動域の評価を行う予定である。耐久性の改善および上記の動作解析評価が出来れば、第3段階としての症例数を増やしての臨床試験に移行する予定である。これら解析結果をまとめて国際誌への論文投稿を目標としている
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は登録症例の増加および臨床データの解析に従事したため研究自体に使用する費用は抑えられた。一方2020年3月にオーストラリアで開催されたAPFSSHに参加予定であったため海外出張旅費を予算として考えていたが、新型コロナウイルスの影響により渡航が中止となったため未使用金額が生じました。来年度は装具治療効果の臨床的エビデンスの構築のために装具使用下でのCT撮影による動作解析を追加計画しており、専用画像解析ソフトおよびワークステーションの購入、そして成果発表の出張旅費に充当する計画である。
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