本研究はCT画像に基づく体表面データおよび骨関節位置情報から、手指変形性関節症に対するオーダーメイドの3Dプリンティング治療装具を開発し、さらに治療前臨床データから装具療法有効性を予測する評価システムを確立することを目的として開始した。昨年までは第1段階として健常ボランティアのCT画像から3Dプリンティング装具を作成し可動範囲と固定性のバランスが適切であるかを評価し、さらに第2段階として臨床試験を開始し、治療装具の安全性の確認および従来型装具との有効性の比較検討を行った。母指CM関節症を有し装具療法の適応となる被験者を対象とし、CT画像からの体表面形状および骨関節位置情報をもとに第1段階にて設計した2種類の3Dプリンティング装具を作成した。またこれと同時 に同一被験者の同一手に対して義肢装具士の作成による従来型の硬性装具を作成し、装具装着時による疼痛VAS・臨床スコアの改善度を経時的に調査し、各装具の装着可能時間および被験者満足度についても評価した。本年度は9例12手を対象として臨床試験を完了し、3Dプ リンティング装具により良好な疼痛改善と機能障害の改善を認めたが、従来型装具との明らかな有意差は得られなかった。一方で装具に対する患者主観的な満足度は3Dプ リンティング装具で良好であった。本成果を日本手外科学会学術集会で発表した。しかし本3Dプリンティング装具は3Dプリンター用フィラメントを熱溶解積層方式にて作成していることから長期装用での耐久性に問題点が浮上し、耐久性の改善に向けて作成方法の変更を行ったが大きな改善は得られなかった。材質の変更を行うことにより耐久性は改善されたものの装着感と製作コストの面で臨床応用は困難と考えられた。3Dプリンティング装具は患者コンプライアンスは良好であるが技術的に解決すべき課題が存在すると考えられた。
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