研究課題/領域番号 |
18K09046
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
奥田 貴俊 順天堂大学, 医学部, 准教授 (00348955)
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研究分担者 |
池田 通 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (00211029)
上高原 理暢 東北大学, 環境科学研究科, 准教授 (80362854)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | Masquelet法 / induced membrane / 人工骨 / 巨大骨欠損 / 多核巨細胞 |
研究実績の概要 |
巨大骨欠損に対しA.C.Masqueletらにより提唱された二段階骨再建法が極めて有効であることが報告され始めた.しかし、一期手術で骨欠損部にスペーサーを挿入してinduced membraneを形成させ、二期手術でスペーサーを除去し、膜の内側に自家骨や人工骨を移植する本法の理論的な裏付け研究は乏しい.Masquelet法がなぜ優れた治療成績を挙げることができるかの理論的根拠を細胞生物学的に解明する。 コントロール群(ラット大腿骨に5㎜のクリティカルサイズの骨欠損を作製し、プレート固定後に欠損部分に我々が開発した直径300~500μm球状の柱状粒子ハイドロキシアパタイトを充填したもの)では異物反応が顕著で、マクロファージ系の単核細胞でセラミック顆粒が被包され、多数の多核巨細胞も出ていた。ほとんどの多核巨細胞はTRAP陰性で、一部TRAP陽性のものがあった。 一方、Masquelet群(同様の骨欠損を作製し、プレート固定後に欠損部分にセメントを充填し、4週間後にセメントを摘出後、セメント周囲を覆うようにできたinduced membrane内に柱状粒子ハイドロキシアパタイトを充填したもの)ではコントロール群に比べると異物反応が明らかに軽度で、単核球による被包がわずかであった。多核巨細胞の数もコントロール群に比べると少なく、TRAP陽性の多核巨細胞もしくは単核細胞がより多く見られた。 Masquelet群では異物反応が軽く異物肉芽腫が形成されにくいため、骨内では新生骨形成時に良好なスキャホールドとして機能すると考えられた。induced membrane内の環境に、骨芽細胞に分化する幹細胞を移植することで、良好な骨誘導が起こることが期待される。今回は人工骨のみの移植であったため、自家骨を混合した人工骨+自家骨移植モデルを作成し、どのような骨代謝が起こっているのかを検討する予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ラットのMasqueletモデルを作製するにあたり、大腿骨を髄内釘で固定する予定であったが、強度的に弱く、プレート固定に変更する必要があった。Masqueletモデルは巨大骨欠損のモデルであり、プレートも一般のものでは骨欠損部分で破綻してしまうため、人体に使用するものと全く同じロッキングプレートのミニサイズを使用する必要があり、モデル作製に非常に時間がかかった。そのため、最初の1年間は進捗が遅れた。 現在はモデル作製も再現性をもって確実に可能となり、順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
ラット大腿骨巨大骨欠損モデル(Masqueletモデル)において人工骨の吸収と骨新生は、ラット骨折モデルや人間と比較して盛んではないことが明らかとなった。つまり移植後4週などの短期間では人工骨の吸収や、新生骨形成はごくわずかであり、実臨床に即した長期観察の必要性が出てきた。そのため人工骨だけではなく自家骨を混合した人工骨+自家骨移植モデルを作成することで骨代謝を活発にし、さらに観察期間も12~24週と長くした上で、どのような骨代謝が起こっているのかを検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
動物モデル作製に時間がかかったためモデル作製数が予定より少なく、翌年度も引き続きモデル作製の費用として使用する。 まだ作製できていない硬組織切片の作製費用として使用する。 動物の飼育期間を延ばす必要があるため、飼育費用として使用する。
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