研究実績の概要 |
巨大骨欠損に対し,A.C.Masqueletにより提唱された二段階骨再建法は臨床において良好な結果が得られている.しかしInduced membrane(IM)についての基礎研究の報告はあるものの骨欠損部の生物学的活性についての報告は少ない.そこでラット大腿骨巨大骨欠損モデルの骨欠損部環境について評価した. 最終年度では次の実験を行った.11週雌Fischerラットの左大腿骨骨幹部に5mmのCritical-sized bone defectを作成し,プレートで内固定を行う. 初回より骨欠損部に生体内吸収性を有する直径0.5 mmの球状顆粒のハイドロキシアパタイト(以下HHA)を移植した群をControl群(C群).初回は骨欠損部にセメントスペーサーを挿入.4週後にスペーサーを抜去後,IM内部にHHAを移植した群をMasquelet群(M群)とした.各群4,8週で移植部位を摘出してタンパク質を抽出し、サイトカインアレイ解析を行った.また破骨細胞数を計測した. その結果,M群4週,M群8週共にリポポリサッカライド誘導型CXCケモカインCXCL3、好中球走化性因子CINC2およびCINC3がC群と比較してM群で有意に高値であった.CXCL3,CINC2α,CINC3は破骨細胞を誘導するケモカインであることが知られており、破骨細胞誘導を促進したと考えられた.また我々は,これまでの研究結果より,IMは初期の炎症を抑制することを明らかとしている. 以上の結果より,Masquelet法の骨欠損部の間質ではIMによって異物反応による炎症性肉芽組織や異物肉芽腫形の成を抑えて、サイトカインによる破骨細胞誘導の促進が起こり、骨代謝が活性化することで新生骨置換に有利な環境となっていることが推察された.
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