研究課題/領域番号 |
18K09053
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
早田 匡芳 東京理科大学, 薬学部生命創薬科学科, 准教授 (40420252)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 破骨細胞 / 選択的スプライシング / RNA結合タンパク質 / 核内構造体 / 骨代謝 / 骨疾患 |
研究実績の概要 |
選択的スプライシングは、タンパク質の多様性実現やmRNA機能のファインチューニングに重要である。選択的スプライシングの異常あるいは変化と疾患の関連性が報告されているが、破骨細胞における選択的スプライシングのメカニズム及び骨疾患との関連性は、不明である。本研究では、骨代謝における新たな転写後制御メカニズムを模索する過程で、RNA結合タンパク質RBP4に着目した。 RBP4は、RAW264.7の破骨細胞分化誘導系において、RANKL処理後2日以降で、遺伝子発現が上昇した。RBP4の細胞内局在を検討した結果、無処理では、RBP4は、細胞質にのみ存在していたが、RANKL処理によって、細胞質に加えて、何らかの核内構造体への局在が観察された。その核内構造体への局在は、全体の約8.2%の細胞で観察され、その核内構造体の直径は平均約1.3マイクロメートルだった。RBP4の核内構造体への局在は、RANKL処理後9時間以降で観察された。RBP4の核内局在に関与するRANKL下流のシグナル伝達機構を明らかにするために、各種阻害剤処理実験を行った。RBP4の核内構造体への局在は、Akt inhibitor Ⅷ、JNK阻害剤SP600125、カルシニューリン阻害剤Cyclosporin A 、PI3-kinase阻害剤LY294002では、抑制されたが、 MEK阻害剤U0126 では抑制されなかった。さらに、これらの核内構造体を同定するために、核スペックルマーカーのSC-35、カハール体マーカーのコイリンと共免疫染色をおこなった結果、RBP4はそのどちらとも共局在しなかった。 今後は、RBP4が局在する核内構造体およびRBP4の標的RNAの同定を試み、RBP4の選択的スプライシングへの関与を明らかにし、破骨細胞特異的RBP4KOマウスを用いて、骨代謝機能、骨疾患との関連性を明らかにしていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2018年度より筑波大学から東京理科大学に異動になり、研究を一時停止せざるを得なかった。異動後、研究室を1から立ち上げることになり、研究設備を整えるのに相当の予算と時間が必要となってしまった。実際、細胞培養設備を稼働させるまでに、5ヶ月を要した。 単球・マクロファージで特異的にRBP4をノックアウトするために、LysM-Creマウスを用いたが、骨髄マクロファージの遺伝子組換え効率が40%にとどまり、この系がうまく働かないことが判明した。プランBとして、Cathepsin K-Creマウスを入手して、破骨細胞特異的RBP4KOマウスを作製し、解析する。 RBP4の標的RNAを同定するためのRNA-免疫沈降実験が難航している。
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今後の研究の推進方策 |
RBP4の核内構造体局在メカニズムを明らかにするために、RBP4のリン酸化機構に着目する。RBP4が局在する核内構造体を同定するために、核内構造体マーカーとの共局在性を検討する。さらに、質量分析により、核内におけるRBP4結合タンパク質を同定する。 RNA免疫沈降実験を成功させ、RBP4の標的RNAを同定し、RBP4の有無で、その標的RNAのスプライシングが変化するかどうかを明らかにする。 RAW264.7細胞において、3種類のRBP4のスプライシングバリアントが発現していることを見出している。また、RBP4が自分自身のmRNAに結合するという報告があるので、RBP4自身が、破骨細胞分化過程において、RBP4自らの選択的スプライシングに関与するかどうかを検討する。さらに、スプライシングバリアントがコードするタンパク質バリアントのそれぞれの機能の相違を明らかにする。 破骨細胞特異的RBP4遺伝子欠損マウスを作製し、閉経後骨粗鬆症、関節リウマチモデルを用いて、RBP4の骨代謝機能を明らかにしていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
助成金を適切に使用したが、59円の未使用金が発生してしまい、次年度へ繰り越すこととした。
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