骨粗鬆症は骨折のリスク因子であり、生活の質の低下に直結する疾患である。ヒトゲノムワイド関連解析により、membrane palmitoylated protein 7(MPP7)遺伝子が骨塩密度に関与することが示された。その際、MPP7の発現低下が骨塩密度の低下と相関した。 申請者らは、MPP7遺伝子の欠損マウスを樹立し、生体内におけるMPP7の機能を解析した。 MPP7欠損マウスは野生型マウスと同頻度で生まれた。雌のMPP7欠損マウスは野生型マウスよりも低い体重を示した。この体重の差は、雄のマウスでは観察されなかった。体重を除いては、MPP7-KOマウスに特異的な異常は同定できなかった。骨組織のヘマトキシリンエオジン染色および三次元骨構造解析でも、MPP7-KOマウスの脛骨と大腿骨に異常は認められなかった。ヒト細胞株を用いて、MPP7の蛋白の発現を調べたところ、MPP7は複数の骨肉腫由来の細胞株に発現していることが示された。 また、U2OS細胞において、MPP7蛋白の発現が免疫沈降実験で確認された。U2OS細胞において、MPP7をノックダウンすると、DLG1蛋白の発現が低下した。Stuckeらは、MPP7がDLG1蛋白の発現を上皮系細胞株において制御すること、MPP7とDLG1が上皮系細胞株のタイトジャンクションの形成に関与することを明らかにした。従って、体重あるいは骨塩量に対するMPP7の機能の一部はDLG1を介する可能性がある。MPP7は骨肉腫細胞株U2OSの分化誘導活性には影響を与えなかった。 以上の結果は、MPP7が生体内において体重の制御に関与すること、および樹立したMPP7マウスがMPP7による骨塩密度の制御機構を解析する上で、有用なモデル動物になることを示した。
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