研究課題
骨軟部肉腫領域での化学療法は、この20年間で特段の変化をみない。しかし肺転移が予後因子であるため、増殖と共に肺転移を抑制する新たな治療ターゲットの発見が望まれる。以前より、血小板が腫瘍の転移に重要であることが報告されており、更に、活性化された血小板より放出される多くのサイトカインが転移に関与していることも報告されている。我々は、ヒト骨肉腫細胞が血小板と凝集・活性化を起こすことをすでに確認している。本研究では、これらの成果を更に発展させ、骨肉腫による血小板活性化の機序を詳細に検討し、血小板活性化が肉腫の増殖・転移に果たす役割を解明し、それを治療へ発展させることが目的である。2年間の結果より、Vitroではあるが、骨肉腫細胞による血小板の凝集や活性化をP2Y12阻害薬のTicagrelorで抑制を認めた。そのため、Vivoにおける効果を検討したが、骨肉腫細胞を尾静注した肺転移モデルにおいてTicagrelorの効果を検討したが、有意な差はなかった。そのため、本年度は過去に報告のあるアスピリンを使用し、更にアスピリンとTicagrelorの併用も行った。143B骨肉腫細胞を尾静脈し、コントロール群、アスピリン群、Ticagrelor群、2剤併用群として検討を行った。2週後に摘出した肺組織のH&E染色標本を用いて、コロニー数をカウントした。しかし4群で有意な差は認めなかった。現状では、抗血小板薬での骨肉腫転移の抑制作用は認めないと考えている。
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