研究課題/領域番号 |
18K09069
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
野口 智恵子 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 客員研究員 (90746653)
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研究分担者 |
尾崎 誠 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 教授 (20380959)
小関 弘展 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(保健学科), 教授 (70457571)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 生体材料 / 細菌付着 / 環境因子 |
研究実績の概要 |
平成30年度の目標は,バイオフィルム形成に至る機序解明として細菌付着に影響する環境側因子(温度,湿度,糖分,脂質,タンパク質,摩耗粉,pH,体液の流れ)を特定することであった。表皮ブドウ球菌(strain RP62A (ATCC35984)) を対象菌とし,人工材料はZirconium oxide (OX),Co-Cr-Mo alloy,Ti-6Al-4V,cp-Ti,SUS316L,3Y-TZP (イットリア含有正方晶ジルコニア多結晶体),Alumina (ISO 6474-1 (draft)),ZTA (ジルコニア強化アルミナ)の8種類とした。菌液(OD600=0.2)を試験片表面に滴下し,60分間付着させた後,試験片をphosphate-buffered saline内に移し,撹拌,超音波洗浄にて付着した細菌を遊離させた。試験片を除去した後の菌液を適宜希釈し,培養キット上で48時間培養した。標準タンパク質として牛血清アルブミン(BSA)を使用し,培養温度は室温と37℃の2条件で行った。colony-forming units(CFU)を各種類で10回ずつ計測し,菌液1mlあたりの菌数を算出した。その結果,「BSA添加:非添加」における付着菌数の平均値(×105/ml)は,OX 7.1:12.3,Co-Cr-Mo alloy 2.2:9.3,Ti-6Al-4V 7.6:15.1,cp-Ti 8.3:16.6,SUS316L 7.9:15.1,3Y-TZP 9.3:14.0,Alumina 7.1:14.5,ZTA 10.9:13.2であり,BSA添加することによって有意に細菌付着が抑制された(P<0.05)。また,室温と37℃の比較では,37℃条件での付着菌数が多い傾向を認めた。低タンパク血症(低栄養)患者のインプラント感染率が高いことを示唆する結果であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
設備や研究に関わる設備の手続きに手間取ったため,2018年度の研究計画を完全には遂行できなかったが,概ね計画通りの成果を挙げている。人工材料の種類を5種類から8種類に増やしたため,細菌の付着に影響する環境因子(タンパクの有無と培養温度)までの研究成果にとどまり,バイオフィルムの形成状況にまでは至らなかった。2019年度は更に湿度,糖分,脂質などの他の環境因子の影響について検討を加えていく。
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今後の研究の推進方策 |
研究代表者が異動したため,長崎大学の客員研究員として研究は継続する。勤務状況をみながら研究に費やす時間を捻出し、更に有意義な成果を挙げられるように工夫していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者が異動となり、実験の設備、機器購入に時間を要した。また、業務内容の変更や働き方改革による勤務時間短縮などにより、研究に打ち込める時間に制約がかかったため、次年度使用額が生じた。2019年度は可能な範囲で計画に沿った研究活動を遂行するつもりであり、2019年度予定額と次年度使用分を併せて使用する。
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