研究課題/領域番号 |
18K09069
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
今井 智恵子 (野口智恵子) 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 客員研究員 (90746653)
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研究分担者 |
尾崎 誠 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 教授 (20380959)
小関 弘展 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(保健学科), 教授 (70457571)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 術後感染症 / バイオフィルム / インプラント |
研究実績の概要 |
最終年度は,抗菌剤の濃度と細菌付着,バイオフィルム形成の関連性,浮遊菌とバイオフィルム形成菌でのタンパク解析,DNA分析,他菌株(黄色ブドウ球菌,緑膿菌,及び耐性菌)での評価という前年度からの内容を完遂した。また,「インプラント感染症に対するアプローチ」のテーマを掲げ,ラット大腿骨インプラント感染モデルを作製し,抗菌薬の効果を判定し,酸化チタンの抗菌性と超音波刺激による対バイオフィルム効果を評価した。骨関節感染症ガイドラインで推奨されている抗菌薬を用いて,抗菌剤の濃度と浮遊菌量,およびバイオフィルムの形成量との相関を検証した結果,抗菌剤の濃度が最小発育濃度(MIC)以上では浮遊菌数とバイオフィルム形成量は抑制されたが,MIC以下では浮遊菌数が低下し,バイオフィルム形成量が増加するという成果を得た。DNA解析,タンパク解析の結果などから,本現象を引き起こすシグナルはDNA変異,RNAレベル,タンパクレベルではなく,同種菌の生産するシグナル物質“オートインデューサー(autoinducer)”による細胞間伝達システムquorum sensingの可能性が高いことが判明した。バイオフィルムの生菌と死菌,細胞外マトリックスの構造をLive/Dead Staining Kitと共焦点レーザー顕微鏡で観察すると,バイオフィルムの辺縁には生菌が多く,死菌や休止菌は内部に分布していた。最新の成果として,ラットの大腿骨インプラント感染モデルでの抗菌剤の効果は限定的であり,バイオフィルム形成を抑制できないことを解明した。また,酸化チタン処理したインプラント表面は紫外線照射によって細菌付着量が低減できたものの,一旦体内に埋入された後は有効な抗菌性を発揮することができなかった。2021年4月~2022年3月まで期間における学会演題発表は10回(その内招待講演2回)であり,論文掲載は5編(その内英字論文4編でSCIEジャーナルは3編)である。
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