研究実績の概要 |
我々は、これまでに慢性期脊髄損傷動物モデルに対し、骨髄間葉系幹細胞 (MSC)を経静脈的に投与し、運動機能の回復が得られることを報告してきた (Morita, Neuroscience, 2016)。移植されたMSCは損傷部位に集積していた。機能回復のメカニズムとして、我々は、集積したMSCによる神経栄養因子による神経保護 作用、損傷局所におけるsprouting、再有髄化、血液脊髄関門の安定化などのメカニズムに加えて、損傷上位に位置する脊髄および脳において、MSC投与によって plasticityが亢進し、新しい神経回路が構築されると考えている (Oshigiri, J. Neurotrauma, 2019)。 さらに我々は、神経損傷動物モデルに対するMSC移植によって運動機能の改善を認めた群を、magnetic resonance imaging (MRI)を用いたdiffusion tensor tractograpy (DTT)による神経軸索イメージングと神経トレーサーによる神経解剖学的解析によって、MSC移植群では描出される神経線維数が、対照群である非 MSC移植群に比べて有意に多いことを明らかにした。また、MSC移植群において、免疫組織学解析から、同部位におけるシナプス数は有意に多かった。これらの結果から、MSC移植によって神経線維が保護・強化されることで神経の可塑性を亢進させ、機能改善に貢献することを明らかにした (Nagahama, Brain Res., 2018)。 本研究では、脊髄圧挫動物モデルを用いて、MSCの経静脈的投与により、脊髄損傷後の損傷局所、ならびに損傷上位脊髄および脳におけるplasticityの亢進によってどのように新しい神経回路が再構築され、運動機能の改善に寄与するかについて検討を行った。脊髄損傷局所における神経トレーサーによる神経解剖学的解析および先進的なDTTによる解析では、神経線維の再構築を示唆する結果を得た。
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