昨年度までの電気生理学的手法を用いた研究結果より、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の治療薬であるRiluzoleが脊髄後角ニューロンにおいてGABAA受容体を介した細胞膜過分極作用により、脊髄レベルにおいて鎮痛作用を有することが明らかとなった。そこで本年度はRiluzoleの鎮痛作用を多角的に証明すべく、行動学的手法により検討した。具体的には5~7週齢のSD雄性ラットを用いて神経障害性疼痛モデルラット(SNIモデルラット)を作成した後、術後7日目においてRiluzoleを腹腔内投与(4mg/kg)し、機械刺激性痛覚過敏反応の程度を測定するvon Frey テストによって疼痛評価を行った。短期間によるRiluzoleの作用を検討する為、Riluzoleは単回投与とし、計測時点はRiluzole投与前、投与後1・6・12・24時間後に設定、足底刺激に対する逃避反応回数を測定した。Riluzole投与群の刺激逃避反応回数は、非投与群のコントロール群と比較して投与後1時間時点において統計的有意差をもって減少していた。しかしながらグループ間の差は徐々に消失し、Riluzole投与後6時間以降は2群間における刺激逃避反応回数に統計的有意差はみられなかった。以上の結果から、Riluzoleの単回投与は、神経障害性疼痛モデルラットにおいて機械的アロディニアを短時間軽減する効果を有することが明らかとなった。
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