研究実績の概要 |
今年度の研究目的はラット腱板変性モデルにおけるSOD(Superoxide dismutase)または酸化ストレス関連分子の発現を調べる事である。まずはラット腱板変性モデル作製のための検討を行い、SDラットに対してコラゲナーゼを右肩峰下滑液包へ2日間注射、3日目に皮膚を切開し直視下に注射するとしっかり腱板が変性する事を組織学的評価で証明した。その方法を用いて右肩をコラゲナーゼ群、対側の左肩に同様の方法で生理食塩水を注射しコントロール群とし、注射後1, 3, 7, 14日目に屠殺、ラットの腱板を採取し、HE染色で組織学的評価、酸化ストレスマーカーであるDihydroethidium(DHE)染色で蛍光強度・陽性細胞数を計測して酸化ストレスの評価、さらに腱板から抽出したmRNAをRT-PCR にて、Sod1, Sod2, Col1, Col3, JNK1, JNK2, PRDX5, MMP1, MMP3, MMP13, VEGF, IL-1β, IL-6の発現を測定し、コラゲナーゼ群とコントロール群で比較した。HE染色では3, 7, 14日目でコラゲナーゼ注射群はコントロール群に比べて腱繊維の不整が見られ細胞数は有意に多かった。DHE染色ではコラゲナーゼ群が14日目でコラゲナーゼ群の蛍光強度が有意に高く、3、7、14日目で陽性細胞数が有意に多かった。RT-PCRではSod1が7日目、Sod2が3、7日目、Col1が1日目、MMP1が1、3日目、MMP3, JNK1が3日目にコラゲナーゼ群でコントロール群に比べて発現が有意に多かった。HE染色・MMP1・3の発現量増加によりコラゲナーゼで腱板が変性を起こしており、DHE染色・Sod1, Sod2, JNK1, JNK2の発現増加によりコラゲナーゼ群の腱板に酸化ストレスが関与していることが示され、腱板変性モデルに酸化ストレスは関係している事が示唆された。
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