研究課題/領域番号 |
18K09081
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
丸山 祐一郎 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80181840)
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研究分担者 |
糸魚川 善昭 順天堂大学, 医学部, 准教授 (30771810)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 酸化ストレス / 腱板 / 抗酸化剤 / 肩関節 / 腱 / 変性 |
研究実績の概要 |
2018年度の実験では、コラゲナーゼを用いたラット腱板変性モデルにおいて、酸化ストレスマーカーであるDihydroethidium(DHE)染色で健側と比べコラゲナーゼ群が14日目で蛍光強度が有意に高くRT-PCRでは抗酸化酵素Superoxide dismutase (SOD)1が7日目にて発現が有意に多かったが、VEGF、MMP3、MMP13には変化なかった。一方、腱板断裂モデルにおいて同様の実験を行ったところ、断裂作成後変性は組織学的に起こっており、DHE染色でも蛍光強度が上昇していたが、RT-PCR でSOD1の発現の上昇はみられず、逆にVEGF、MMP3、MMP13は上昇していた。これらの事から腱板の変性に酸化ストレスが関与するが、腱板断裂前の腱板変性における酸化ストレスの上昇にはSOD1は関与しているが、断裂後の変性の増加に関しては、SODは関与せず別なメカニズムにて引き起こされている可能性が示唆された。 さらに2019年度の目的であるヒト腱板断裂におけるSODの寄与の解明についての実験も行った。50名の腱板断裂患者から手術中に腱板を採取し、また対照群として20名の上腕骨骨幹部骨折患者の手術にて採取した腱板と比べた所、腱板断裂患者の腱板は組織評価にて変性スコアが上昇しており、さらにDHE染色では蛍光強度が有意に高かったが、SOD活性には差が認められなかった。また、変性スコアとDHEの輝度、SOD活性とは弱い相関を認めた(R=0.4, 0.32)。このことからヒト腱板断裂の変性においても酸化ストレス、SODが関与している事が示唆された。今回の結果は、J Orthop Res. 2020 Jan;38(1):212-218.に投稿された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2018年の腱板動物モデルにおける実験は、まだ論文になっていないものの、すでにおおよそ予想された結果が出ていた。2019年のヒト腱板断裂における酸化ストレスの関与の研究はすでに予想された結果が出ており、整形外科基礎領域では最も権威のある国際誌JORに論文発表されている。さらに2020年開始予定の動物腱板修復モデルにおけるレスキュー実験は予備実験が開始されている。
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今後の研究の推進方策 |
2018年度と同様の実験体制で実験を行う。ラットに腱板断裂させ、修復したモデルに対して、抗酸化剤、エダラボン、抗酸化ペプチド、抗炎症薬剤を用いた単回投与レスキュー実験を行う。現在までのシグナリング解析で示唆される分子の阻害剤や促進剤なども投与を検討する。代謝マーカーを指標に各レスキュー効果を判定する。それらのうち効果のあったものに対して継続投与レスキュー実験を行う。最終的に効果ありと判定された薬剤の薬理作用を考察し引っ張り試験を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度に腱板修復モデルに高額な抗酸化剤を使って実験するために、予備実験を2019年度後半に行う予定であったが、新型コロナウイルスの混乱によって試薬が購入出来ず、実験室も混乱が落ち着くまで使用出来ない状態となっているため、予備実験における動物と抗酸化剤の未使用分の差額である。この予備実験は次年度以降に実施する予定である。
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