研究課題/領域番号 |
18K09086
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研究機関 | 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター |
研究代表者 |
若尾 典充 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, 病院, 医長 (80528802)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 癌骨転移 / 放射線治療 / 分子標的薬 / 有限要素解析 / 骨関連有害事象 / 生命予後 |
研究実績の概要 |
データベースに登録した計222例の転移性脊椎腫瘍患者のうち、治療介入前から介入後4年までの追跡が可能であった112例を対象に解析を行った。この一年で14例が亡くなった。内訳は肺がん 33例、大腸がん18例、乳がん17例、前立腺がん16例、胃がん7例、腎がん6例、甲状腺がん3例、子宮がん2例、卵巣がん3例、悪性リンパ腫3例、膵がん2例、胆のうがん2例であった。目的変数を生存とし、説明変数を家族歴、既往歴、出身地、嗜好品、職業、運動、画像情報(MRI, CT, PET-CT)、放射線治療反応有無(縮小 or 不変)、原発癌、組織型、stage、癌治療歴、分子標的薬使用の有無に設定した多変量解析の結果、放射線治療反応性が良好な群は不良群に比較し優位に生存率が高かった。(Kaplan-Meier法、p<0.001)。また原発癌では胃がん、すい癌、胆のうがんが有意に生命予後不良であった。骨修復薬の長期的効果について、CT上の骨硬化を目的変数、説明変数を家族歴、既往歴、出身地、嗜好品、職業、運動、画像情報(MRI, CT, PET-CT)、原発癌、組織型、stage、癌治療歴、分子標的薬使用の有無に設定した。多変量解析の結果、放射線治療後の転移巣骨硬化所見に有意に寄与する因子は 原発癌(前立腺がん、乳がん、肺がんで腫瘍縮小効果良好。)長期4年でも骨修復薬の効果、生命予後に及ぼす影響が確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度までの研究データベース構築と継続により、長期予後の追跡は概ね順調に進んでいる。本年度は昨年度同様にCovidの影響があり、通院ができずに情報収集の支障が生じたが、電話診察で生存か否かは全例で確認できた。特に癌腫を問わず、分子標的薬使用の効果は顕著で、骨転移を有するstageⅣの胆癌患者における生命予後をも延長させていた。今年度は定期的な通院を、Covid感染に十分配慮し定期的に午後診察の混みあわない時間帯に集中させ診療データの蓄積を継続したい。また併せてEQ5DによるQOL評価も試行し、生命予後延伸とQOLの関係も明らかにしたい。
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今後の研究の推進方策 |
今年度も引き続き癌骨転移と生命予後、これに関わる因子の解析がテーマであった。データベース構築後4年経過し、約半数の症例が他界した。これまで生命予後には骨転移巣の様相よりもより強く原発癌種が影響している結果であったが、年々新規薬剤が登場している分子標的薬はそれとして生命予後を有意に長くさせていた結果は興味深い。個別の分子標的薬の効果を合わせて多変量解析で評価する予定である。また死亡症例が半数に至ったことから、手術で採取した骨検体の病理データ中に存在する骨形成・骨破壊に関わる転写因子およびIL-11, MMP-9の定量データと死亡の相関についても検証をしたい。今年度もCovidの影響で外来通院による臨床情報収集が予定通りにいかなかった。またこれにともない今年度計上していた関連経費は償却されなかった。このため、一年研究期間を延長することにより当初の研究計画を完了する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
長期追跡データを収集し、生命予後・骨転移による有害事象を目的変数とした多変量解析と有害事象に関わる分子機構の解明を目的とした臨床研究であるが、今年度もCovidの影響で外来通院による臨床情報収集が予定通りにいかなかった。またこれにともない今年度計上していた関連経費は償却されなかった。このため、一年研究機関を延長することにより当初の研究計画を完了する予定である。長期追跡によって、約半数の登録患者が他界されたためendpointを死亡とした解析が可能となる段階に至った。交絡因子を広く検証し①生命予後に関わる分子の同定②分子標的薬および骨修復薬の効果の検証を行う予定である。
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