研究課題
平成30年度は、8週齢雄性の野生型マウス(C57BL/6J)およびTransient receptor potential vanilloid (TRPV) 1ノックアウト(KO)マウスを用いて実験を行なった。神経障害性疼痛モデルとして坐骨神経部分結紮モデル(PSL)を使用した。PSLはSeltzerら(1990)の手法に準じ、右大腿後面に皮膚切開を加え、右坐骨神経を露出した後に、6-0絹糸で坐骨神経の1/3~1/2を部分結紮した。対照群は無処置群と偽手術群とし、それぞれn=5~6となるようにマウスを無作為に割り振った。処置前にマウスの表現形としてTRPV1が遺伝子欠損していることを確認するためにカプサイシンテスト(2分間)を行いアイワイプの回数を測定した。その結果、TRPV1KOマウスでは有意に低値だった。また、処置前後の温痛覚閾値を確認するために、処置前、処置後7日ならびに14日にvon Frey テスト、Hot plateテストを行なった。その結果、処置前のHot plateテストでは、TRPV1KOマウスで野生型マウスと比較しWithdrawal latencyが高値を示した。処置後7日、14日のvon Frey テスト、Hot plateテストでは、野生型マウスならびにTRPV1KOマウスのPSL群でそれぞれの対照群と比較しWithdrawal threshold、latencyともに有意に低値だった。しかし、TRPV1KOと野生型マウスのPSL群を比較すると、TRPV1KOマウスで温痛覚閾値が高値を示した。また、処置後15日にマウスを灌流固定して脳および脊髄を採取し、ミクロトームを用いて視床下部視索上核(SON)、室傍核(PVN)および 第5 腰髄(L5)レベルの脊髄後角を含む切片を作成し、今後免疫組織学的染色を行なう予定である。
4: 遅れている
計画初年度 (平成30年度) は、TRPV1KOマウスだけでなくTRPV4KOマウスならびにTRPV1・4ダブルKOマウスでもPSLを作成し実験をする予定となっていたが、マウスの繁殖等の遅れのためそこまで至っていない。
次年度(令和元年度)においては、TRPV1KOマウスの神経障害疼痛モデルの実験を継続し、免疫組織学的染色法やin situハイブリダイゼーション法を用いて、オキシトシンニューロンやバゾプレッシンニューロンの活性動態やmRNAの発現レベルをそれぞれのマウスならびに群間で比較検討を行う。また、TRPV4KOマウスならびにTRPV1・4ダブルKOマウスを用いて同様の実験を行う予定である。本研究の成果は、日本生理学会、日本整形外科学会などの国内学会および国際学会で発表し、国際専門誌に英文論文として発表する予定である。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件)
Neuroscience
巻: 406 ページ: 50~61
10.1016/j.neuroscience.2019.02.027
Neuroscience Letters
巻: 678 ページ: 76~82
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