研究課題
平成31年度は、8週齢雄性の野生型マウス(C57BL/6J)およびTransient receptor potential vanilloid 1ノックアウト(TRPV1KO)マウスを用いて実験を行なった。右側坐骨神経を部分結紮し神経障害性疼痛モデル群を作成した。また、無処置群、偽手術群を対照群とし、各群間ならびに系統間での比較検討を行なった。処置後15日にマウスを灌流固定し、脳および脊髄を摘出し、ミクロトームを用いて視床下部視索上核(SON)、室傍核(PVN)および第5腰髄(L5)レベルを含む脳ならびに脊髄切片を作成し、免疫組織学的染色(IHC)を行った。まず、脳切片を用いて最初期遺伝子の一つであるFosBとオキシトシン(OXT)もしくはバソプレシン (AVP)に対する二重IHCを行い、SON・PVNにおけるFosB陽性細胞数ならびにFosB陽性細胞のOXTもしくはAVPとの共発現率を計測した。その結果、FosB陽性細胞数は野生型・TRPV1KOマウス共に神経障害性疼痛モデル群のSON・PVNにおいて優位に増加していたが、系統間では有意差を認めなかった。また、FosB陽性細胞のOXTもしくはAVPとの共発現率は各群間・系統間で有意差を認めなかった。続いて、脊髄切片を用いて、FosB、GFAP(アストロサイトの指標)およびIba-1(ミクログリアの指標)に対するIHCを行い、患側脊髄後角I-II層におけるFos B陽性細胞数ならびにGFAPもしくはIba-1陽性細胞のGFP輝度を測定した。結果、FosB陽性細胞数ならびにGFAPもしくはIba-1陽性細胞のGFP輝度は野生型・TRPV1KOマウス共に神経障害性疼痛モデル群で有意に増加しており、Fos B陽性細胞数とGFAP陽性細胞のGFP輝度に関してはTRPV1KOマウスでWTマウスと比較し、有意に低値であった。
4: 遅れている
計画2年度 (平成31/令和元年度) は、TRPV1KOマウスだけでなくTRPV4KOマウスならびにTRPV1・4ダブルKOマウスでもPSLを作成し実験をする予定となっていたが、マウスの繁殖等の遅れのためそこまで至っていない。
次年度(令和2年度)においては、TRPV1KOマウスの神経障害疼痛モデルの実験を継続し、day7のタイムコースを追加する。in situハイブリダイゼーション法を用いて、オキシトシンニューロンやバゾプレッシンニューロンの活性動態やmRNAの発現レベルを系統間ならびに群間で比較検討を行う。また、TRPV4KOマウスならびにTRPV1・4ダブルKOマウスを用いて同様の実験を行う予定である。本研究の成果は、日本生理学会、日本整形外科学会などの国内学会および国際学会で発表し、国際専門誌に英文論文として発表する予定である。
購入した試薬が予定より安価だったため残額が生じた。来年度に試薬購入費として使用する予定である。
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