研究課題/領域番号 |
18K09088
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研究機関 | 産業医科大学 |
研究代表者 |
佐羽内 研 産業医科大学, 医学部, 非常勤医師 (70644863)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | モデル動物 / 骨修復過程 / 骨折 / 性差 / 性ホルモン / エストラジオール / テストステロン / NOS |
研究実績の概要 |
平成30年度に行った研究において、野生型マウスでは骨修復速度に性差があることが判明し、雄と雌の骨修復部を比較したところ、雄に比べて雌の方が骨修復が早く起こる現象を確認した。本現象には性ホルモンが関与していると仮説を立てて、令和元年度は本現象に関する検証を行った。 雄と雌の野生型マウス8週齢に対し、ドリルを用いて大腿骨骨幹部前面に直径 1 mmの骨孔を作成した。雌は、偽手術(sham)群、卵巣摘出(OVX)群、OVX + estradiol (E2)投与群、雄は、sham群、精巣摘出(ORX)群、ORX + testosterone (T)投与群、ORX + dihydrotestosterone (DHT)投与群に分けて、μCTで経時的に骨孔修復部のBMDを測定し、性ホルモンとの関連を評価した。 野生型マウスの雌の各時点(術後2週、4週)の骨孔修復部BMDは雄に比べて有意に高かった。雌は、sham群と比較して、OVXにより術後4週の修復部BMDは低下し、E2投与によりsham群と同等にまで改善した。一方、雄は、sham群と比較して、ORXにより術後4週の修復部BMDは低下し、T投与によりsham群と同等にまで改善したが、E2に変換されないDHT投与では改善しなかった。血清E2値は雌で有意に高く、術後4週の骨孔修復部BMDは血清E2値と相関したが、血清T値は術後4週の修復部BMDと相関していなかった。 骨修復速度には血中E2濃度が強く関与しており、性差を認めた要因と思われた。平成30年度の検証では、トリプルNOS遺伝子欠損マウスには野生型マウスのような性差はなく、骨修復に与えるE2のアナボリックな作用がNOを介した作用であることが示唆された。今後、検証を続けていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定していた検証ポイントを確実に実施している。もう少し検証を進めていけば、本年度中に論文投稿が可能であると考えている。今後も計画通りに研究を進めていく。
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今後の研究の推進方策 |
おおむね順調に研究が進展しているため、当初の計画通りに研究を進めていく。令和元年度は、性ホルモンであるE2が骨修復能に関与していることを野生型マウスを用いて調査したが、本年度は、骨修復能に与えるE2のアナボリックな作用がNOを介した作用であることを明らかにするために、トリプルNOS遺伝子欠損マウスを用いて同様の実験を行っていく。 また、新型コロナウイルス流行に伴い、動物研究センターが閉鎖された場合、研究が大幅に 遅れる可能性がある。以下の対策を講じて、感染拡大予防に努めていく。1) 体調不良者はセンターへ入館しない。2) 中止や延期が可能な研究については見送る。3) 入退館する際にはなるべく少人数とする。4) センター入退館時、動 物飼育室入退室時に必ず消毒用アルコールで手指消毒を行う。5) 動物飼育室に入室する際には、マスク、帽子、手袋を着用する。6) 動物飼育室の入室は1名と し、飼育員や他の実験者がいる場合には、入室しない。7) 繁殖する動物数を必要最低限とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度予算のうち、次年度繰り越しが生じた。これは、外注検査として発注済みである検体の、遺伝子解析にかかる経費として支払う予定であったものである。しかしながら、解析が2019年度内に完了しなかったため、2020年度に繰り越して支払う予定となった。
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